神戸大学大学院糖尿病・内分泌内科学部門教授の小川渉氏らは9月3日、希少疾患で治療抵抗性の糖尿病であるインスリン抵抗症および脂肪萎縮性糖尿病に対するSGLT2阻害薬エンパグリフロジンの有効性を医師主導治験(第Ⅲ相試験)で明らかにしたと発表した。この結果を受け、両疾患に対しエンパグリフロジンの適応追加を申請する見込みだという。

従来は多量のインスリン皮下注射による疼痛、副作用リスクが問題に

 難治性のインスリン抵抗症ではインスリン受容体の働きが障害されるために、脂肪萎縮性糖尿病では脂肪組織が欠如あるいは大幅に減少するためにインスリン抵抗性が生じる。国内の推定患者数はそれぞれ100人程度とされる。

 両疾患では、従来の経口血糖降下薬が奏効しないために多量のインスリン皮下注射を要するケースも少なくないが、そうした患者では強い疼痛が生じ、重大な副作用である低血糖のリスクが高まる。

 現状、両疾患に対してはインスリン様成長因子(IGF)-1製剤やレプチン製剤などの注射薬が保険適応されており、SGLT2阻害薬を含む経口血糖降下薬は医師の判断により適応外で処方されている。

 しかしSGLT2阻害薬は、尿糖排泄の促進を介して血糖を低下させるという作用機序を有するため、強いインスリン抵抗性を示す糖尿病患者においても血糖低下が期待できると考えられてきた()。

図. インスリンとSGLT2阻害薬の作用

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(神戸大学プレスリリース)

HbA1c値が約1%低下、インスリン使用量は30単位減少

 そこで小川氏らは、難治性のインスリン抵抗症および脂肪萎縮性糖尿病の患者を対象として、エンパグリフロジンの有効性および安全性を評価する医師主導治験を実施した。

 対象は、大学病院において治療を受けている両疾患の患者8例で、エンパグリフロジン10mgを1日1回経口投与し、効果の不十分な例には25mg増量。投与開始24週間後におけるHbA1c値を治療前と比較し、その変化量を評価した。

 その結果、HbA1c値は治療前と比べ平均で約1%低下した(8.46±1.45%→7.48±1.26%)。また、インスリンを使用していた患者では平均使用量が約30単位減少した(116.5±38.9単位→89.0±52.3単位)。

 以上の結果について、同氏らは「SGLT2阻害薬エンパグリフロジンの投与は、難治性のインスリン抵抗症および脂肪萎縮性糖尿病患者に対する症状の改善とQOLの向上に寄与すると考えられる」と結論。「今後、エンパグリフロジンの適応症として、インスリン抵抗症および脂肪萎縮性糖尿病が追加申請される見込みである」と述べている。

(陶山慎晃)