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(© Adobe Stock ※画像はイメージです)

 ドイツ・University of Leipzig, StrümpellstrのSteffen Desch氏らは、ドイツとデンマークで非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)による院外心停止後に蘇生した患者を対象に、即時冠動脈造影の有用性を検証する国際多施設共同非盲検ランダム化比較試験(TOMAHAWK試験)を実施した。その結果、主要評価項目である30日後の全死亡は即時造影群と遅延造影群で有意差はなく、副次評価項目の30日後の全死亡または重度の神経障害については即時造影群で多く発生し、即時冠動脈造影の有用性は確認されなかったと欧州心臓病学会(ESC 2021、8月27~30日、ウェブ開催)で発表した。結果の詳細はN Engl J Med2021年8月29日オンライン版)に掲載された。

Non-shockableリズムの蘇生患者を含む554例が対象

 心筋梗塞は院外心停止の主な原因であるが、非STEMIによる心停止からの蘇生患者において、早期に冠動脈造影と血行再建を行うことの利点は明らかでない。

 非STEMIの院外心停止患者を対象とした2019年のランダム化比較試験Coronary Angiography after Cardiac Arrest(COACT、関連記事「心停止後の冠動脈造影、即時と遅延で差なし」)では、即時造影群と遅延造影群の比較で、主要評価項目である90日後の生存率、副次評価項目である有効性と安全性のいずれにおいても、両群に有意差は認められなかった。しかし、COACT試験ではST上昇のない院外心停止患者の約60%を占めるshockableリズムの患者しか含まれていないため、shockableリズムでない院外心停止患者に対する冠動脈造影の適応とタイミングに関するエビデンスはまだ十分に存在しない。

 今回の研究の対象は、2016年11月〜19年9月にドイツとデンマークの31施設における、冠動脈に起因する可能性のある院外心停止から蘇生し、心電図でST上昇を認めない30歳以上の患者554例〔年齢中央値70歳、四分位範囲(IQR)60~78歳、女性30.4%〕で、shockableリズムとnon-shockableリズムのいずれの患者も含む。対象者を、即時冠動脈造影を行う群(即時造影群、281例)と、初期集中治療の評価を行い遅延または選択的な造影を行う群(遅延造影群、273例)にランダムに割り付けた。

 主要評価項目は30日後の全死亡、副次評価項目は30日後の全死亡または重度の神経障害の複合とした。554例中530例(95.7%)が解析対象となった。

30日後の全死亡は即時群54% vs. 遅延群46%

 解析の結果、主要評価項目である30日後の全死亡は、即時造影群では265例中143例(54.0%)、遅延造影群では265例中122例(46.0%)で有意差は認められなかった〔ハザード比(HR)1.28、95%CI 1.00~1.63、P=0.06〕。

 複合副次評価項目である30日後の全死亡または重度の神経障害は、即時造影群では255例中164例(64.3%)、遅延造影群では248例中138例(55.6%)であり、即時造影群の方が遅延造影群より多かった〔相対リスク(RR)1.16、95%CI 1.00~1.34〕。

 トロポニンのピーク値、中等度または重度の出血、脳卒中の発生率、腎代替療法の導入については、両群で差は認められなかった。

 以上から、非STEMIで院外心停止後に蘇生した患者における即時冠動脈造影は、遅延または選択的な冠動脈造影に対する優位性を示さなかった。

 Desch氏は「今回のTOMAHAWK試験ではCOACT試験と同様に、即時冠動脈造影の成績が遅延・選択的冠動脈造影よりも優れているわけではないことが明らかになった。即時造影群で死亡や重度の神経障害の発生率が高かったことについては、新たな仮説が生まれたにすぎない。しかし、心停止の引き金となる重大な冠動脈病変がない患者にとって、侵襲的なアプローチは有益ではなく、むしろ有害となる可能性があることを示唆している」と述べている。

今手麻衣