第二世代抗精神病薬に分類されるセロトニン・ドパミン遮断薬リスペリドンとパリペリドン。しかし、両剤は他の抗精神病薬に比べホルモンバランスの乱れが報告されるなど、有効性や安全性に疑問の声が上がっている。英・University of ManchesterのAlexander Hodkinson氏らは、両剤に関する患者の個別データおよび臨床試験報告書を「再検証」し、結果をBMC Med2021; 19: 195)に発表した。

RCT 35件・1.2万例超をメタ解析

 Hodkinson氏らによると、統合失調症や双極性障害の治療薬として広く使用されているリスペリドンは、ホルモンバランス関連の副作用である女性化乳房や高プロラクチン血症などの発生により、製造企業に対し1万3,500件を超える訴訟が起こされている。また、同様の作用機序を有する統合失調症治療薬パリペリドンについても、有効性や安全性に疑問符が付いているという。

 こうした背景から同氏らは、これら両剤の有効性と安全性をあらためて検討する目的でメタ解析を実施した。対象は、2020年12月時点でMEDLINE、Central、EMBASE、PsycINFOに掲載され、統合失調症および双極性障害患者に対するリスペリドンまたはパリペリドン(パリペリドンパルミチン含む)について検討したプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)のうち35件・1万2,316例を抽出。さらに、臨床試験の透明性を目的とした米・Yale University Open Data Accessプロジェクトから、対象の個別データおよび臨床試験報告書を入手した。

 RCT 35件の主な内訳は、実施地域が米国25件、欧州7件、患者の平均年齢が39歳、小児および19歳以下を含むものが3件、対象疾患は統合失調症が25件、双極性障害が10件。投与薬は、リスペリドンが11件、パリペリドンが16件、パリペリドンパルミチンが8件であった。

有効性は認められるも「小さい」

 患者の個別データを用い有効性について検討するため、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計スコアが得られた22件をメタ解析した。その結果、投与後のPANSS合計スコアの平均変化は、リスペリドン群が−5.83(95%CI −10.79〜−0.87、I2=8.5%)、パリペリドン群が−6.01(同−8.7〜−3.32、I2=4.3%)、パリペリドンパルミチン群が−7.89(同−12.1〜−3.69、I2=2.9%)と、いずれも有意な減少(改善)が認められた。

 しかしながら、Hodkinson氏らは「両剤の経口薬とプラセボを比較した2019年のネットワークメタ解析結果に比べ、有効性はより小さかった。さらに重要なこととして、同様の比較を行った2016年の3件のCochrane Reviewに比べ、実臨床におけるPANSS合計スコアの減少幅が小さかった」との見解を示している。

 安全性について検討するため、臨床試験報告書に記載された有害事象および深刻な有害事象を掲載論文と比較した。その結果、有害事象は掲載論文データに比べ臨床報告書では約2倍〔4,434件 vs. 2,296件、相対差(RD)1.93、95%CI 1.86〜2.00〕、深刻な有害事象は臨床報告書では約8倍(650件 vs. 82件、同7.93、6.32〜9.95)多いことが明らかになった。

 以上から、同氏らは「今回のメタ解析では、統合失調症または双極性障害患者におけるリスペリドンおよびパリペリドンの有効性と安全性について、これまでで最も詳細に調査した。有効性については両剤のPANSS合計スコアの有意な減少が認められたものの、論文掲載のデータに比べ効果は小さかった。安全性については、論文掲載データに記載されていない有害事象が臨床試験報告書で多く確認された」と結論。「抗精神病薬の有効性と安全性を正確に評価するには、患者の個人データと臨床試験報告書を用いることが必要」と付言している。

松浦庸夫