新型コロナウイルスの「第5波」が続く中、政府が決定した行動制限緩和策。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出ていても、ワクチン接種などを条件に、県をまたぐ移動や飲食店での酒類提供が容認される。専門家は「緩和は気の緩みにつながる。新規感染者が少ない今こそ、医療提供体制の充実を優先して」と訴える。
 日本より早くワクチン接種が進み、行動制限を緩和した諸外国では、新規感染者と死亡者が再び増加している。英オックスフォード大研究者らのデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」によると、100万人当たりの新規感染者(8日時点の1週間平均)は日本107.88人に対し、イスラエルはその約8.6倍で、英国は約5.3倍、米国も約4.2倍の多さだ。死亡者も同様にそれぞれ約6.0倍、約4.1倍、約9.6倍と高い水準となっている。
 感染症に詳しいけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師は「未接種者を中心に感染が拡大し、接種者も多数感染している。拙速な制限緩和でイスラエルなどの二の舞いになる恐れもある」と警鐘を鳴らす。「接種を条件にすれば、『ワクチンを打てば大丈夫』という気の緩みにつながる恐れがある。海外の動向を慎重に見極めるべきだ」と話す。
 菅谷氏は「新規感染者が減っているのは事実。まずは感染状況のさらなる悪化といった最悪の事態に備え、臨時病院の新設や病床増設を優先するべきだ」と強調。「入院できず自宅療養中に亡くなる例や、患者搬送のたらい回しがこれ以上起きないための体制を早急に整備して」と訴える。
 東京医科大の浜田篤郎特任教授(渡航医学)は「緩和する場合は、感染状況がある程度収まり、ワクチン接種率が国民全体の6~7割(現在約5割)に達する必要がある」と指摘。「緩和は段階的に進めるべきだ。特に飲食店での酒類提供や3密状態が生まれやすい大規模イベントの緩和はかなり慎重に考えてほしい」と話している。 (C)時事通信社