新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大(パンデミック)により遠隔医療の普及が加速化されたが、パンデミック期間中に遠隔医療へのアクセスの格差がどのように生じたかは不明である。東京大学大学院社会医学専攻社会予防医学講座の宮脇敦士氏らは、パンデミック下の複数の時点における国内での遠隔医療利用率を年齢や社会経済状況別に解析した結果、格差が拡大している可能性が示唆されたことをJ Med Internet Res2021; 23: e27982)に報告した。

対象はJACSIS研究に参加する18~79歳の2万7,641人

 COVID-19パンデミックにより、世界各国で遠隔医療の普及が促進された。しかし、その普及には格差があり、遠隔医療の利用率は①都市部に在住②社会経済状況が良好③若年者―で高いことが報告されている(NEJM Catalyst Innovations in Care Delivery 2020年3月4日オンライン版Popul Health Manag 2020; 23: 368-377J Am Geriatr Soc 2021; 69: 44-45J Telemed Telecare 2020年10月21日オンライン版JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2021; 147: 287-295)。

 ただし、これらの報告はパンデミック期間中の特定の時点での解析によるものであり、パンデミックの長期化により遠隔医療の普及がどのようにして進展したかは不明である。

 宮脇氏らは「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(The Japan COVID-19 and Society Internet Survey;JACSIS)(関連記事『新型コロナによる経済・健康「格差」を探る』)」に参加した22万4,389人に対し、①2020年4月②2020年8〜9月―の2つの時点における遠隔医療の利用に関するアンケートを実施(実施期間2020年8月25日〜9月30日)。2万8,000人(12.5%)から回答が得られ、18〜79歳の2万7,641人が研究の対象とされた。

 対象は年齢および社会経済状況(学歴、居住地、世帯収入)により層別化され、年齢は「18〜29歳」「30〜39歳」「40〜49歳」「50〜59歳」「60〜69歳」「70〜79歳」の6群、学歴は「高学歴(大学卒業以上)」「中学歴(短期大学、専門学校、高等専門学校卒業)」「低学歴(高校卒業以下)」の3群、世帯所得は「高所得(年収430万円以上)」「中所得(同250〜430万円)」「低所得(同250万円未満)」「無回答」の4群に分けられた。居住地は2015年の国勢調査に基づく人口密集地区を都市部と定義した。

 回答に一貫性がなかった2,477人と郵便番号情報が欠落している638人が除外され、最終的に2万4,526人(女性50.8%、平均年齢50.1±16.6歳)が解析対象とされた。学歴は低学歴が49.1%と最も多く、中学歴は18.7%、高学歴は32.3%だった。また、参加者の59.8%が都市部に住んでいた。

高齢世代でも利用が進む一方、低学歴や非都市部在住層で低率

 2020年4月時点での遠隔医療利用率は2.0%で、2020年8〜9月には4.7%に上昇した。交絡因子を調整後の年齢別の遠隔医療利用率は、若年世代ほど高かった。この傾向は8〜9月も同様だが、70〜79歳では4月の0.2%から8〜9月には3.8%と3.5%ポイント有意に上昇した(P<0.001、図1)。

図1. 遠隔医療の利用率(年齢別)

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 学歴による遠隔医療利用率は、2020年4月時点では差はなかったが、2020年8〜9月では学歴が高いほど利用率が高かった(図2左上)。居住地による利用率は4月時点では差はなかったが、8〜9月では都市部に住む人で利用率が高かった(図2右上)。世帯所得については4月時点、8〜9月とも差はなかった(図2下)。

図2. 遠隔医療の利用率(学歴、居住地、世帯所得別)

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(図1、2ともJ Med Internet Res 2021; 23: e27982)

 これらの結果を踏まえ、宮脇氏らは「全国的な大規模インターネット調査により、COVID-19パンデミック下において高齢世代でも遠隔医療の利用が進みつつある一方、学歴や居住地による遠隔医療へのアクセスにおける格差が拡大したことが示唆された。社会経済的に不利な立場にある人を置き去りにしている可能性があり、医療への平等なアクセスの実現に向けたさらなる努力が求められる」と結論した。

(安部重範)