線虫はにおいに対する感受性が高く、ヒトの尿中でがん特有のにおいを感知するとそこへ移動する誘引行動を見せ、健康人の尿には忌避行動を示すこと(走性行動)が知られている。大阪大学大学院最先端医療イノベーションセンターの浅井歩氏らの研究グループは、早期発見が困難な膵がん患者の尿に対しても、線虫が同様の行動を示すことを多施設共同試験で明らかにしたと、Oncotarget2021; 12: 1687-1696)に報告した。

患者の術前後の尿で線虫の走性を確認

 膵がんの5年生存率は9%にとどまり(CA Cancer J Clin 2020; 70: 7-30)、患者の大半は手術不能で、手術例でも生存期間の中央値は17〜23カ月と報告されている(Lancet 2011; 378: 607-620)。一方で、国際対がん連合(UICC)分類病期で0期の患者に限れば5年生存率は85%に達する(Pancreas 2012; 41: 985-992)。予後改善には早期発見が不可欠であるが、画像診断による検出は困難であり、既存の腫瘍マーカーの陽性率も十分ではなかった。

 そこで研究グループは、まず2015年10月~19年6月に登録した0~Ⅳ期の膵がん患者83例を対象に非盲検試験を実施し、術前後の尿を用いて線虫(C. elegans)ににおいを検知させた。すると0~IA期の患者では、術後に比べ術前に有意に走性が高かった(10倍希釈:P<0.001、100倍希釈:P<0.001)。

健康人の尿との比較でも同様の傾向

 次に0~IA期の11例と健康人17例を対象とした盲検試験を実施。C. elegansが尿により早期膵がんを検知できるか検討した。その結果、膵がん患者の術前の尿に対するC. elegansの走性は術後の尿に比べて有意に高く〔10倍希釈:P<0.001、受信者動作特性曲線下面積(AUC)0.845、100倍希釈:P<0.001、同0.820〕、健康人の尿との比較でも同様の傾向が見られた(10倍希釈:P=0.034、100倍希釈:P=0.088、)。

図. 早期膵がんと健康人の尿に対する線虫の走性の比較

29229_fig01.jpg*数値がマイナスになるほど、線虫が尿から離れている(忌避行動を示す)ことを表す

大阪大学プレスリリース

 研究グループは「線虫を用いた膵がん検査の精度は、従来の標準的な腫瘍マーカーより優れていると統計学的に示された」とし、今後の検討による膵がんの早期診断法への応用に期待を示している。

(須藤陽子)