新型コロナウイルス禍で浮き彫りになった日本の公共部門のIT対応の遅れは「デジタル敗戦」とも言われ、巻き返しを期すデジタル庁の設立は菅義偉政権の看板政策となった。強力な権限を持つデジタル改革の司令塔設置を実現したことには評価の声が多い。今後は、実際に行政サービスの向上という「成果」につなげられるかが問われる。
 「実質10カ月しかない中でやれたのは、菅首相のリーダーシップだ」。平井卓也デジタル相は7日の閣議後記者会見で、1日に発足したデジタル庁の設立過程を振り返り、首相を持ち上げた。
 コロナ禍では、デジタル化の不備による情報伝達の混乱や現金給付の遅れが指摘され、はんこや書類、対面の商慣行が、テレワーク推進の障害となった。菅政権は発足直後から行政手続きで必要な押印の廃止を推進。今後は他省庁への勧告権を持つデジタル庁が、マイナンバーの利活用促進や行政の基盤システムの統一・標準化など「本丸」に取り組む。
 事務方トップのデジタル監には、民間から経営戦略などが専門の石倉洋子一橋大名誉教授を迎え、省庁の縦割り打破を目指す。ベンチャー企業幹部も「行政サービスを利用者志向にしようとすることは正しい」と歓迎する。
 ただ、600人の職員のうち3分の1を民間企業出身者が占めるデジタル庁の運営には特有の難しさもある。平井氏も「物事を進めるときに(官民で)文化が違うというのは既に感じている」と課題を指摘する。
 行政デジタル化の恩恵を国民が早期に実感するには、組織融合を進めて政策を迅速に遂行することが不可欠。平井氏は「そこができないと、(デジタル改革が)『絵に描いた餅』になってしまう」と危惧した。 (C)時事通信社