【ロンドン時事】英国で英雄視されるチャーチル元首相を記念した慈善団体が組織名やウェブサイトを修正し、「チャーチル色」を薄めたことが波紋を広げている。元首相は人種差別主義者だったとの批判があり、修正はそれを踏まえたと受け止められている。これに保守系メディアが「歴史の書き換えだ」と反発、元首相のファンで知られるジョンソン首相も「彼の偉大な業績を消し去るなど、まったくばかげている」と不快感をあらわにした。
 団体は1965年、元首相死去を受けて設立され、海外に留学する英国人に奨学金を出すなどの事業を行っている。
 大衆紙が先週、「ウィンストン・チャーチル記念信託」から「チャーチル奨学金」に名称変更され、サイトにあった元首相の写真や実績一覧、賛辞などが削除されたと大きく報道。「(ナチス・ドイツによる侵略という)最も苦しい時に英国を救った人物がこんな形で否定されるとは信じ難い」とする怒りの声を伝えた。
 団体側は名を変えたのは活動内容が分かるようにするためで、元首相を否定する意図はないとサイト上で説明。写真も一部復活させた。一方で、「人種に関する彼の見解の多くは今日では受け入れられない。人種差別主義は許されない」とも指摘した。
 ダウデン文化相は「われわれの歴史のあらゆる面に異議を唱える騒がしい(人種差別や社会的不公正に敏感な)『ウォーク』集団に迎合するもので、実に気掛かりだ」として団体の主張を切り捨てた。
 チャーチル氏は白人至上主義だったとされ、西欧が北米やオーストラリアの先住民に苦難を強いたことについて「より強く、上級で賢い人種が彼らの場所を奪った事実をもって、悪いことが行われたとは認めない」などと語っている。
 米国で昨年起きた白人警官による黒人男性暴行死をきっかけに、英国では奴隷制や人種差別などへの批判が噴出。象徴とされる像が撤去されたり、団体名が変更されたりし、保守党政権は警戒を強めている。 (C)時事通信社