脳卒中専門救急車モバイルストロークユニット(MSU)で搬送された虚血性脳梗塞患者では、発症90日後の転帰が有意に改善した。米・Houston Mobile Stroke Unit Consortiumが米国7施設で実施した前向き研究の結果を、同団体の創設者・ディレクターで米・University of Texas Health Science Center at Houston(UT Health Houston)、Memorial Hermann-Texas Medical CenterのJames C. Grotta氏らがN Engl J Med2021; 385: 971-981)に報告した。MSU群では組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)静注療法開始までの時間が短く、t-PAを受けた割合も高かったという(関連記事「脳卒中の予後を改善する救急車」)。

MSU群は60分以内のt-PA投与率高い

 急性期の虚血性脳梗塞患者では、発症後4.5時間以内のできる限り早期にt-PAを投与することが転帰改善に有用とされる。MSUはCTを搭載し脳卒中を診断・治療する訓練を受けた専門スタッフ〔救急医療隊員、CT技術者、救命救急看護師、神経内科医(MSUに同乗または遠隔医療で参加)〕が乗務する救急車。医療機関に到着する前に脳卒中を診断しt-PAを開始することで、標準的救急車で搬送して標準的救急医療を受ける場合と比べ臨床転帰が改善する可能性がある。

 Houston Mobile Stroke Unit Consortiumでは2014~20年に米国7都市(ヒーストン、コロラド、メンフィス、ニューヨーク、ロサンゼルス、バーリンゲーム、インディアナポリス)の7施設〔UT Health Houston 、University of Colorado Anschutz Medical Campus、University of Tennessee、New York Presbyterian(Weill Cornell and Columbia University)、University of California, Los Angeles、Sutter Health、Indiana University Health 〕で虚血性脳梗塞患者1,515例を登録。t-PA静注療法の適応があった患者を隔週でMSU群または標準的救急治療(EMS)群に割り付け転帰を比較検討した。主要評価項目は、発症後90日時の修正rankin scale(mRS:0~6点、点数が高いほど障害が重度)スコアを基に算出したutility-weighted mRS(0~1点、点数が高いほど良好)スコアとした。

 解析は1,047例(MSU群617例、EMS群430例)を対象に行った。

 脳卒中発症からt-PA静注療法開始までの時間(中央値)はMSU群72分、EMS群108分、発症から60分以内に同療法を開始した割合は、それぞれ33%、3%。t-PA適応患者のうち同療法が施行された割合は97.1%、79.5%だった。

退院時の転帰も有意に改善

 解析の結果、発症後90日時の平均utility-weighted mRSスコアはMSU群が0.72点、EMS群が0.66点。発症後90日時の平均mRSスコアが0点または1点の患者の割合はそれぞれ55.0%、44.4%。t-PA適応患者においてEMS群に比べMSU群で発症後90日時の転帰〔障害が認められない(utility-weighted mRSスコア0.91~1点、mRSスコア0~1点)〕が有意に改善した(修正オッズ比2.43、95%CI 1.75~3.36、P<0.001)。Grotta氏は「EMS群に比べMSU群では発症90日後に障害を有する患者が100例当たり27例少なく、障害がない患者が100例当たり11例多かった」と説明している。

 退院時の平均utility-weighted mRSスコアはMSU群が0.57点、EMS群が0.51点。全登録患者においてEMS群に比べMSU群では退院時の転帰〔障害が認められない(utility-weighted mRSスコア0.91~1点、mRSスコア0~1点)〕が有意に改善した(修正オッズ比1.82、95%CI 1.39 ~2.37、P<0.001)。

 症候性頭蓋内出血の発症率は両群とも2.2%。発症後90日時の死亡率は、MSU群が8.9%、EMS群が11.9%だった。

 以上から、同氏は「t-PAの適応となる急性期脳卒中患者の発症90日後の転帰は、EMS群に比べMSU群で有意に改善した」と結論。「MSUが広範に配備されれば、脳卒中による障害の減少に対する公衆衛生上の大きなインパクトとなる可能性がある。MSUはコストがかかるが、治療開始までの時間を減少させ、その後の長期ケアの必要性を低減させると考えられる」と指摘している。

(大江 円)