新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの3回目接種(ブースター接種)について、イスラエルから新たなエビデンスが示された。同国・Weizmann Institute of ScienceのYinon M. Bar-On氏らは、113万人超のリアルワールドデータを用いてファイザー製メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン(トジナメラン)におけるブースター接種の有効性を検証。SARS-CoV-2感染率は2回接種の約10分の1に低下したとN Engl J Med2021年9月15日オンライン版)に報告した。

感染率と重症化率を検証

 イスラエルではインド型変異(デルタ)株の流行拡大に伴い、今年(2021年)7月30日、トジナメランの2回接種を完了した60歳以上を対象にブースター接種が承認された。ただし、ブースター接種の必要性をめぐっては見解が分かれており、Lancet誌は9月13日付で米食品医薬品局(FDA)のワクチン担当者らによる「ブースター接種を必要とする根拠は見られない」との報告を掲載している(Lancet2021年9月13日オンライン版、関連記事:「ワクチン追加接種は『不要』 専門家ら、英医学誌に論文」)。

 Bar-On氏らは、イスラエル保健省のデータベースから2021年7月30日〜8月31日のデータを検索。60歳以上で少なくとも5カ月以上前(同年3月1日以前)にトジナメランの2回接種を完了した113万7,804人を抽出し、ブースター接種の有効性を検証した。

 一次分析では、対象を直近12日以内にブースター接種を受けた群(ブースター接種群)と受けていない群(非ブースター接種群)に分け、SARS-CoV-2感染率および重症化率を比較した。二次分析では、ブースター接種から4〜6日後と12日後におけるSARS-CoV-2感染率を算出した。なお、重症化は①安静時の呼吸率が30回/分以上②常温呼吸時の酸素飽和度(SpO2)が94%以下③動脈酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)の比が300以下−と定義した。

ブースター接種後12〜25日で著明に低下

 検討の結果、一次分析においてSARS-CoV-2感染率は非ブースター接種群に対しブースター接種群では率比(RR)11.3(95%CI 10.4〜12.3)、重症化率は同19.5(12.9〜29.5)と、ブースター接種群で大幅に低かった。ブースター接種群のSARS-CoV-2感染率は3回目接種後から経時的な低下を示し、接種後12〜25日時点では非ブースター接種群に対し低下幅は7〜20倍であった()。また二次分析において、SARS-CoV-2感染率は、ブースター接種後4〜6日時点に対し12日時点では著明に低かった(RR 5.4、95%CI 4.8〜6.1)。

図. 非ブースター接種群に対するブースター接種群における感染率の低下幅

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N Engl J Med2021年9月15日オンライン版)

 以上の結果を踏まえ、Bar-On氏は「60歳以上へのトジナメランのブースター接種により、2回接種と比べSARS-CoV-2感染率および重症化率が大幅に低下した」と結論。「この研究は、デルタ株に対するmRNAワクチンのブースター接種の有効性を示すものである」としている。

(平山茂樹)