習慣的に運動する人は不安症リスクが約60%低下する。スウェーデン・Lund UniversityのMartina Svensson氏らが同国の40万人を最大21年間追跡した結果をFront Psychiatry2021年9月10日オンライン版)に報告した。

男女ともにリスクが低下

 不安症の改善には運動が有効とされているが、不安障害の発症リスクと運動量、強度、体力との関連は明らかでない。そこでSvensson氏らは、習慣的に運動をする人の代表として1989~2010年に世界最大の長距離(30~90km)クロスカントリーレースVasaloppetに参加したスキーヤーと、スキー(運動)をしない一般人計40万人を最長21年間追跡して運動習慣と不安症発症の関係を解析した。

 対象は不安症と重篤な疾患がないスキーヤー群19万7,685人(年齢中央値36歳、女性38%)とマッチングした一般人(対照)群19万7,684人の計39万5,369人。

 397万5,881人・年〔中央値10年(四分位範囲5~15年)〕の追跡期間中に1,649例(スキーヤー群456例、対照群1,193例)が不安症と診断された。

 解析の結果、不安症発症リスクは対照群に対しスキーヤー群では62%低下した〔未調整ハザード比(HR)0.38、 95%CI 0.34~0.42〕。対照群に比べてスキーヤー群は教育レベルが高かったが、Cox回帰モデルで年齢、性、教育レベルを調整後も同様の結果が示された(調整HR 0.42、95%CI 0.37~0.47)。

 スキーヤー群における不安症リスクの低下は男女を問わず認められ(男性:未調整HR 0.37、95%CI 0.32~0.43、女性:同0.39、0.33~0.46)、運動習慣は不安症発症リスクの低下と関連することが分かった。

身体能力と不安症リスクに性差

 しかし、レース優勝者の所要時間を100%とし、各スキーヤーを所要時間(身体能力の代用)で優勝者の100~150%、150~200%、200%超の3群に分類して、個々の身体能力(極端な運動の影響、所要時間が短いほど身体能力が高い)を推定したところ、身体能力と不安症リスクの関係に性差が認められた。

 男性では身体能力と不安症リスクに関連は認められなかった(未調整HR 0.73、95%CI 0.47~1.12、P=0.14)のに対し、女性ではレース所要時間が長く(200%超)、身体能力が低いスキーヤーに比べ所要時間が短く(100~150%)、身体能力が高いスキーヤーでは不安症リスクが2倍だった(未調整HR 2.00、95%CI 1.23~3.26、P=0.005)。Cox回帰モデルで年齢、教育レベルを調整後も女性における結果は一貫していた(調整HR 1.72、95%CI 1.05~2.83)。しかし、レース参加後5年目以降に不安症と診断された者に限ると、性差は消失し、男女ともに身体能力と不安症リスクに関連は認められなかった(男性:未調整HR 0.71、95%CI 0.44~1.17、P=0.18、女性:同1.67、0.86~3.23、P=0.13)。

 以上を踏まえ、Svensson氏らは「スウェーデン人約40万人を最長21年間追跡した研究から、運動習慣がある集団(スキーヤー)では、一般集団と比べて不安症の発症リスクが60%低いことが分かった。最初の5年間に不安症と診断された者を除外しても結果は一貫していた。習慣的な運動と不安症発症リスク低下の関係は、男女を問わず認められたが、身体能力と不安症発症リスクの関係には男女差が認められた」と結論した。

 さらに「運動と不安症は遺伝子、心理的要因、性格などわれわれの検討には含まれなかった交絡因子の影響を受けている可能性が高い。極端な運動を行った場合に性差を促進する因子とそれらの交絡因子がどのように不安症発症に影響を及ぼすかを研究する必要がある」と付言している。

(大江 円)