加齢黄斑変性、白内障、糖尿病関連眼疾患などの眼疾患により全認知症リスクが上昇することが、UK Biobankのデータを解析した結果から明らかになった。中国・Guangdong Provincial People's HospitalのXianwen Shang氏らがBr J Ophthalmol2021年9月13日オンライン版)に報告。ただし緑内障は全認知症リスクを上昇させなかったという。

加齢黄斑変性がリスクを26%上昇

 視覚障害は認知症の初期症状の1つである可能性があり、視覚経路への刺激低下が認知症進行を加速させると考えられている。幾つかの小規模研究で視覚障害の原因となる加齢黄斑変性、白内障、糖尿病関連眼疾患、緑内障などの眼疾患と認知障害の関連が示唆されている。認知症の危険因子である糖尿病、高血圧、心疾患、うつ病、脳卒中などの全身性疾患とともに年齢の上昇に伴ってこれらの眼疾患は増加するため、眼疾患と認知症の関係が全身性疾患と独立した関連かどうかは明らかでない。そこでShang氏らはUK Biobankのデータを用いて認知症と眼疾患、全身性疾患の関係を解析した。

 UK Biobank に登録、2006~10年にベースラインの評価をした55~73歳の成人1万2,364人を2021年まで追跡。入院患者記録、死亡診断書、自己申告データを用いて認知症の発症を確認した。

 追跡期間126万3,513人・年に全認知症2,304例、アルツハイマー病945例、血管性認知症513例の発症が報告された。

 追跡期間中の1,000人・年当たりの全認知症例の発症は、加齢黄斑変性患者で2.94例(vs. 非加齢黄斑変性患者1.78例)、白内障患者で2.77例(vs. 非白内障患者1.67例)、糖尿病関連眼疾患患者で5.94例(vs. 非糖尿病関連眼疾患患者3.34例)、緑内障患者で2.65例(vs. 非緑内障患者1.77例)だった。

 Cox比例ハザードモデルで共変数を調整して眼疾患と認知症の関係を見ると、全認知症リスクは非加齢黄斑変性患者に対し加齢黄斑変性患者で26%〔多変量調整ハザード比(HR)1.26 、95%CI 1.05~1.52〕、非白内障患者に対し白内障患者で11%(同1.11 、1.00~1.24)、非糖尿病関連眼疾患患者に対し糖尿病関連眼疾患患者で61%(同1.61 、1.30~2.00)上昇した。非緑内障患者に対し緑内障患者では血管性認知症リスクが48%(同1.48 、1.13~1.94)上昇したが、アルツハイマー病リスク(同0.89 、0.70~1.14)、全認知症リスク(同1.07 、0.92~1.25)は上昇しなかった。

白内障と全身性疾患の併発でリスクが1.19~2.29倍

 白内障と全身性疾患を併発する患者の認知症リスクは両者を有さない患者の1.19~2.29倍、糖尿病関連眼疾患と全身性疾患を併発する患者の認知症リスクは両者を有さない患者の1.50~3.24倍だった。

 白内障と認知症の関連のうち追跡期間中に発症した糖尿病が寄与した割合は9.2%(95%CI 2.9~5.4%)、高血圧が寄与した割合は7.1%(同2.7~17.0%)、心疾患が寄与した割合は9.1%(同3.3~22.5%)、うつ病が寄与した割合は12.0%(同4.5~28.4%)、脳卒中が寄与した割合は22.4%(同8.0~48.9%)だった。糖尿病関連眼疾患と認知症の関連のうち、高血圧、脳卒中、心疾患、うつ病と糖尿病が寄与した割合は10.0%(同9.4~31.5%)だった。

 最後にShang氏は「加齢黄斑変性、白内障、糖尿病関連眼疾患は全認知症リスクを上昇させたが、緑内障はリスクを上昇させなかった。眼疾患と全身性疾患を併存する患者はそれぞれを単独に保有する患者に比べて認知症リスクの上昇が大きかった」と結論。さらに「白内障/糖尿病関連眼疾患と認知症の併発には高血圧、糖尿病、脳卒中、心疾患、うつ病の発症が寄与していた」と付言した。

(大江 円)