新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流⾏期には早期の胃がんと⼤腸がんの診断数が有意に減少し、⼤腸がんでは進⾏したステージで発⾒される例が増加した。横浜市⽴⼤学肝胆膵消化器病学の葛⽣健⼈氏(現・国立病院機構横浜医療センター消化器内科)、同講師の⽇暮琢磨氏らは、COVID-19流⾏前と流⾏期における消化器がんの新規診断数の変化について調べた結果をJAMA Netw Open2021年9月21日オンライン版)に報告した。COVID-19流行下の受診控えが影響したものと考えられた。

胃がんは27%、大腸がんは13%減少

 海外ではCOVID-19の流行に伴うロックダウンや医療崩壊によりがんの新規診断数が著減し、今後がんによる死亡者数が増加すると予測されている。

 こうした中、葛⽣氏、⽇暮氏らは、2017~20年に同⼤学病院と国⽴病院機構横浜医療センターで新規の消化器がん(⾷道がん、胃がん、⼤腸がん、膵がん、肝臓がん、胆道がん)と診断された5,167例を対象に診断時のステージを調べ、2017年1月~20年2月をCOVID-19流行前(4,218例、男性67.0%、平均年齢71.3歳)、2020年3~12月を流行期(949例、男性64.0%、平均年齢71.8歳)として両期間におけるステージを比較した。

 その結果、流行前に対する流行期の1カ月当たりの平均新規がん診断数は、胃がんで26.87%(30.63例 vs. 22.40例、P<0.001)、大腸がんで13.47%(41.61例 vs. 36.00例、P=0.03)有意に減少した。

 ステージ別に見ると、胃がんのステージⅠは35.51%(21.55例 vs. 13.90例、P<0.001、図1)、⼤腸がんのステージ0は32.89%(10.58例 vs. 7.10例、P=0.008、図2)、ステージⅠは34.04%(10.16例 vs. 6.70例、P=0.003)、ステージⅡは35.32%(7.42例 vs. 4.80例、P=0.01)有意に減少した。

図1. 胃がんのステージ別に見た月平均新規診断数

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図2. 大腸がんのステージ別に見た月平均新規診断数

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(図1、2とも横浜市立大学プレスリリースを基に編集部作成)

⼤腸がんのステージⅢは68%増加

 一方、⼤腸がんのステージⅢは68.42%(7.18例 vs. 12.10例、P<0.001)有意に増加した。

 膵がん、食道がん、肝がん、胆道がんについては、有意な変化は認められなかった。

 わが国ではCOVID-19流⾏下においても諸外国で実施されたようなロックダウンは行われず、⼀部地域を除いて医療制限も⾏われなかった。葛⽣氏らが再診患者数を調べたところ、流行前に比べ流行期に有意な減少は認められなかった。しかし「初診者数は有意に減少しており、受診制限は⾏わなかったものの、胃がんや⼤腸がんは早期では症状が出現しないことが多く、無症状・軽症状の患者が受診を控えた結果、初診者数が有意に減少し、早期胃がん・早期⼤腸がんの診断数が減少した可能性がある」と同氏はいう。また「近年増加傾向にあり、患者数が多い⼤腸がんについては、受診控えによる大腸内視鏡検査施⾏時期の遅れのため進⾏したステージで発⾒される例が増加した可能性がある」と説明している。

 さらに同氏らは「COVID-19の流行前後でがん発生率は大きく変化していないと考えられるが、受診控えによる診断数の減少により、今後も進行がんで発見されるケースが増加する可能性がある」と指摘。「病院受診、胃内視鏡・⼤腸内視鏡検査などの検診を適切なタイミングで行い、がんを早期発見することが重要である」と呼びかけている。