日本小児科学会は、小児医療を担う診療所や病院における患者の受診控えや、COVID-19診療による影響などの運営実態を調べるため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の第二波期間中に当たる2020年7~8月に同学会の代議員を対象に行ったアンケート調査の結果を一次調査報告としてまとめ、9月21日に公式サイトで公表した。それによると、入院、外来とも約8割の施設で患者数が前年に比べ20%以上減少し、小児入院医療管理料の施設基準が満たせなくなった、またはその恐れが生じた施設が2割弱にも及ぶなど「病院、診療所ともに経営上の危機に晒されている」と危機感を表明した。

回答者の約8割が勤務医、患者数の減少幅などについて聞き取り

 COVID-19の流行により小児科を受診する患者数激減し、小児医療に甚大な影響をもたらしているという。病院・診療所を問わず経営上の危機に晒されているが、厚生労働省などの行政機関から小児科受診患者数が他の診療科より減少したことが指摘されているものの、詳細は明らかではない。

 そこで、同学会はCOVID-19の流行によって小児科を受診する患者の動態を保険診療の観点から分析するため、小児科(病棟)を対象に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う小児医療機関の保険診療上の課題に関する調査」を実施した。調査は2020年7~8月に同会代議員583人、392施設を対象にウェブアンケートを行った。回答数は277施設(277人)で、回答率は70.7%だった(1施設に複数の代議員が所属する場合は1人が代表して回答)。回答者の勤務属性は、勤務医221人(79.8%)、開業医50人(18.1%)、研究者4人(1.4%)、その他2人(0.7%)であった。

 調査項目は、①COVID-19流行後の患者数の減少(前年比)②COVID-19診療から見た影響③小児入院医療管理料から見た影響ーなどで、最後に自由意見に記載を求めた。

患者が50%以上減少は、入院・外来とも3割以上

 まず、COVID-19流行後の患者数の減少状況について聞いたところ、前年比で50%以上減少した施設は入院で37%(72施設)、外来で35%(80施設)だった。前年比20%以上減少した施設は、入院で41%(80施設)、外来で48%(108施設)となった。COVID-19流行に伴う病棟再編などの理由で小児入院医療管理料の施設基準が満たせなくなった、もしくはその恐れが生じた施設は17%(39施設)に及んだ。一方、減少した患者の内訳を尋ねたところ、入院では感染症、他院紹介、手術の順、また外来では感染症、慢性疾患、他院紹介の順に多かった。

 COVID-19診療の有無と診療対象(成人、小児)で患者数への影響を調べた。その結果、患者が前年比50%以上減少したと回答した割合は、小児、成人ともCOVID-19患者を診療している施設では入院は45%、外来は35%、成人のみのCOVID-19患者を診療している施設ではそれぞれ52%、44%、小児のみのCOVID-19を診療している施設ではそれぞれ11%、11%だった。一方、COVID-19の診療を行っていない施設はそれぞれ23%、16%だった。

従来の診療形態では診療が成り立たなくなる可能性も

 報告書では、小児のCOVID-19患者を受け入れている施設で患者数減少の影響が少なかった理由について、「こうした施設は小児専門病院と考えられ、長期通院を必要とする患者やCOVID-19以外に緊急または重症で診療を要する患者を平時から多数受け入れている。そのため、急性疾患の患者の割合の多い成人のCOVID-19患者を受け入れている医療機関に比べて影響が少なかったと考えられる」と考察した。

 また、COVID-19の流行により生活様式が一変して医療機関への受診控えがひとたび発生すると、「RSウイルスやインフルエンザといった他の感染症はこれまで経験したことがない規模で減少し、その結果、急性疾患の診療を主体とする小児科の存続自体が危ぶまれる」と危機感を示した。その上で、「新型コロナウイルスに対するワクチンが奏効したからといって、必ずしもCOVID-19流行前の環境に戻るとも言えない」として、「従来の小児診療の診療形態では、診療が成り立たなくなる可能性がある」と指摘した。とはいえ、小児に対する高度医療が引き続き必要なことは変わりなく、「その在り方を改めて検討していく時期と考えられる」と課題を挙げた。

 同研究の限界としては、迅速性を優先するため、患者数の傾向を捉える方法として、実際の患者数を計測せず、代議員の主観による回答方法を採用した。中には、自施設の患者数を確認した上で回答した施設もあるが、そうでない施設もあり、回答の均一性が保たれていないという。そこで、より客観的な数値で現状を把握するため、2020年11月から2021年2月に小児科を標榜する2,519施設に対し、具体的な患者動態の変化を主に診療報酬の算定数で把握し、定量的に評価することを目的に二次調査を実施した。結果は今後報告される予定だという。

(小沼紀子)