慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科の加藤弘陸氏と米・カルフォルニア大学ロサンゼルス校准教授の津川友介氏、米・ハーバード大学などの研究グループは、米国の65歳以上の高齢者に関する診療情報明細データを解析した結果、緊急入院した患者を勤務日数が少ない医師が治療した場合、勤務日数が多い医師が治療した場合に比べ死亡率が高い傾向が見られたと発表。研究の詳細を、JAMA Internal Medicine9月13日オンライン版)に報告した。「死亡率上昇を防ぐために、パートタイム勤務の医師に対する追加的な支援が必要」と指摘している。

米国でパートタイム医師が増加、全医師の4分の1に

 米国では、育児や家族のケア、研究、管理職業務を行うためなどの理由から、パートタイムで臨床に携わる医師が増加傾向にある。全医師に占める割合は1993年の11%から現在は25%まで増加したというデータがあり、4人に1人がパートタイム勤務と推定されている。勤務時間の短縮による医師のパフォーマンスについて、既存の調査では患者満足度や医療の質はフルタイム医師と比べて同等か高いことが示されているが、それらの研究は規模が小さく、死亡がまれな外来診療に関するものであった。

 そこで、研究グループは、入院治療を専門にする内科医(ホスピタリスト)による治療を受けた患者を対象に、パートタイム勤務の医師が提供する医療の質が、フルタイム勤務の医師と比べて同等か否かについて検証するため、医師の年間臨床勤務日数と患者死亡率の関係を調べた。

 研究では、2011~16年に病院で治療を受けた65歳以上のメディケア受給者の20%をランダムに抽出。1万9,170人のホスピタリスト(平均年齢41.1歳)が治療を担当した39万2,797件の緊急入院例を対象に解析した。

 医師を年間臨床勤務日数(平均値)により、①第1四分位群(勤務日数57.6日、医師3,683人)②第2四分位群(同98.5日、同3,714人)③第3四分位群(同130.8日、同3,678人)④第4四分位群(同163.3日、同3,631人)ーの4群に分類。治療を受けた患者数は、それぞれ6万9,371人、8万1,226人、10万9,044人、13万3,156人だった。勤務日数の最も多い第4四分位群は、典型的なフルタイム勤務の医師の勤務日数に近かった。また、第1、第4四分位群を比べると、男性の割合がそれぞれ54.2%、69.3%、平均年齢は40.6歳、43.2歳と、第4四分位群では男性が多く、年齢が高かった。

患者の死亡率に0.9ポイントの違い、「無視できない差」

 主要評価項目を30日以内の死亡率、副次評価項目は再入院率と設定し、患者側の要因(年齢、性、主傷病、併存疾患など)や医師側の要因(性、年齢)、病院の固定効果(同じ病院内での患者の死亡率の比較)による影響を補正して評価した。

 解析の結果、30日以内の死亡率は、第1四分位群が10.5%、第2四分位群が10.0%、第3四分位群が9.5%、第4四分位群が9.6%だった。第1、第4四分位群には0.9ポイントと有意差があり、研究グループは「無視できない差だと考えられる」と結論づけた。

 一方、再入院率については、第1四分位群が15.3%、第2四分位群が15.5%、第3四分位群が15.3%、第4四分位群が15.2%と、医師の勤務日数との関連は認められなかった。

 さらに、四分位より細かく10日ごとに年間勤務日数でグループを設定し、各グループの患者死亡率を評価した。その結果、勤務日数が年間130日まではほぼ単調に死亡率が低下するが、それより勤務日数を増やしても明確な死亡率の低下は認められなかった。

「医師の多様な働き方」と「医療の質の改善」の両立を

 以上の結果から、研究グループは「パートタイムで臨床を行うことは、患者の死亡率上昇をもたらす可能性が示唆された」と結論した。

 一方で、「医師のパートタイムという勤務形態は、燃え尽き症候群(バーンアウト)の回避やワークライフバランスの実現に有効」として「パートタイム勤務の利点を残しつつ、意図せぬ患者のアウトカム悪化を防ぐためにパートタイム医師に対する追加的な支援が必要な可能性がある」と指摘。医師の多様な働き方を支援しつつも「医療の質を改善する方法を見いだすことが期待される」としている。

(小沼紀子)