新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大は世界各国の臓器移植医療にも深刻な影響を与えている。フランス・Université de ParisのOlivier Aubert氏らは、22カ国(日本、欧州16カ国、北米2カ国、南米3カ国)における臓器移植データの解析から、COVID-19の流行が拡大以降、2020年末までの固形臓器(腎臓、肝臓、肺、心臓)の移植件数は、前年(2019年)の同期間と比べ約16%減少していたことを欧州臓器移植学会(ESOT 2021、8月29日~9月1日、ウェブ併催)で発表した。国別で見ると日本の減少幅が最も大きく、7割弱に上った。研究結果はLancet Public Health2021年8月30日オンライン版)に同時掲載された。

減少幅では腎移植が最大

 Aubert氏らは今回、COVID-19のパンデミックによる臓器移植医療への影響について検討するため、22カ国の2019年および2020年の固形臓器移植に関するデータを収集。当該国で累計100例目のCOVID-19患者が報告された日から2020年12月31日までの期間と、前年(2019年)の同じ日から12月31日までの期間の臓器移植件数を比較した。

 その結果、いずれの国も2019年と比べて2020年には臓器移植件数が減少しており、全体で1万1,253件(15.92%)減っていた。臓器別に見ると、腎移植が19.14%減と最も減少幅が大きく、次いで肺移植(15.51%減)、肝移植(10.57%減)、心移植(5.44%減)の順だった。

 全体の移植件数を国別に見ると、特に日本は減少幅が大きく、前年と比べて66.71%減少していた。一方、米国は4.13%減、英国は31.31%減、ドイツは10.53%減、フランスは28.96%減であった。

COVID-19死亡数が多い国で減少幅小さい

 また、観察期間中にCOVID-19の影響で臓器移植が受けられなかったことで失われた生存年数は、腎移植待機者で3万7,664年、肝移植待機者で7,370年、肺移植待機者で1,799年、心移植待機者で1,406年、合わせて4万8,239年と推定された。

 この他、COVID-19に関連した臓器移植件数の減少幅と国民100万人当たりのCOVID-19による死亡者数との関係を国別に見ると、日本とアルゼンチンはCOVID-19による死亡者数が他国と比べて少ない一方で臓器移植件数が大幅に減少していたのに対し、米国やイタリア、スイス、スロベニア、ベルギーはCOVID-19による死亡者数は他国と比べて多いが臓器移植件数の減少幅は小さかった。

 Aubert氏らは、この研究結果の意義について「国や医療システムごとに異なるCOVID-19に関連した問題への対応について理解することは、パンデミックへの備えおよび対策の強化や、安全な臓器移植プログラムの維持につながる」との考えを示している。

(岬りり子)