韓国・Seoul National University HospitalのJung Eun Yoo氏らは、同国の国民健康保険公団(NHIS)のデータを用いて糖尿病と結核(TB)との関連を検討。その結果、TB新規発症リスクは非糖尿病者と比べて糖尿病患者で高く、糖尿病罹病期間が長くなるほど上昇したとJAMA Netw Open2021; 4: e2126099)に発表した。新規糖尿病発症者では、空腹時血糖(FPG)値が202mg/dL以上の群で低値群と比べてTBの新規発症リスクが高かった。

糖尿病患者でTBリスク48%上昇

 Yoo氏らは、NHIS登録データから2009年に健康診断を受けたTB既往歴がない20歳以上の成人442万3,177例(平均年齢46.5歳、男性58.7%)を抽出し、健診日の1年後から2018年12月31日まで追跡した。対象を、①正常血糖(FPG値100mg/dL未満)、②糖尿病とはいえないFPG異常(同100~125mg/dL)、③新規糖尿病発症(同126mg/dL以上)、④糖尿病罹病期間5年未満、⑤同5年以上ーの5群に分類し、糖尿病とTB新規発症との関連を検討した。

 解析の結果、中央値で8.3年(四分位範囲8.1~8.6年)の追跡期間中に2万6,458例(0.6%)が新規にTBを発症していた。糖尿病患者は非糖尿病者に比べてTBの新規発症リスクが48%高かった(調整後ハザード比(aHR)1.48、95%CI 1.42~1.53)。TB新規発症リスクは糖尿病罹病期間とともに上昇し、aHRは新規糖尿病発症群で1.32(95%CI 1.23~1.42)、糖尿病罹病期間5年未満群で1.45(同1.36~1.54)、同5年以上群で1.57(同1.48~1.66)だった。

 一方、FPG異常群では正常血糖群と比べてTB新規発症リスクの上昇は認められなかった(aHR 0.97、95%CI 0.93~1.01)

罹病期間5年以上の男性、若年者でTBのリスクが顕著

 また、年齢および性で層別化してサブグループ解析を行った結果、正常血糖群に比べて糖尿病罹病期間5年以上群でTB新規発症リスクが高かった。この傾向は、特に男性(aHR 1.84、95%CI 1.72~1.98)および45歳未満の若年者(同4.61、3.62~5.88)で顕著だった。

 さらに、新規糖尿病発症群のうちFPGの最低十分位群(128mg/dL未満)と比べ、最高十分位群(202mg/dL以上)ではTB新規発症リスクが有意に上昇していた(aHR 1.79、95%CI 1.42~2.26)。

高血糖が誘発する免疫機能低下が関与の可能性

 以上を踏まえ、Yoo氏らは「糖尿病罹病期間が長いほどTB新規発症リスクが上昇し、新規糖尿病発症者ではFPG値が202mg/dL以上になるとTB新規発症リスクが上昇した」と結論している。

 糖尿病患者におけるTBリスク上昇のメカニズムについては、高血糖を誘発する免疫系の機能低下を挙げ、「糖尿病とTBの併発例では、健康人と比べてTリンパ球数減少とT細胞機能低下〔ヘルパーT細胞1型によるサイトカイン分泌低下、腫瘍壊死因子(TNF)α産生低下、インターロイキン(IL)-1およびIL-6産生低下など〕が認められる。また、TBに対する防御機構においてはマクロファージが重要な役割を果たすが、糖尿病患者では貪食能および殺菌能を含むマクロファージ機能が低下する」と指摘している。

 さらに、糖尿病罹病期間の長さとTBリスクの関連については、「糖尿病患者で見られるインスリンシグナル伝達の低下には、T細胞における抗原特異的増殖と炎症性サイトカイン産生の減少が示されている。したがって、罹病期間が長い糖尿病患者のTBリスク上昇には、インスリン産生低下とインスリン受容体が媒介するT細胞のシグナル伝達の変化が関与している可能性がある」との見解を示している。

 なお今回の研究では、糖尿病罹病期間5年以上とTBリスクとの関連が男性および若年者でより顕著であることが示されたが、正確なメカニズムについては説明できないものの「テストステロンが原因の可能性がある」と考察している。

(太田敦子)