新型コロナウイルス対策で、半年近くに及んだ緊急事態宣言が全面解除されることになった。就任から1年余り、コロナ禍との闘いに明け暮れた菅義偉首相が、退陣を目前に決断した。政権を引き継ぐに当たり、対策に一区切り付けた形だが、感染拡大の「第6波」への懸念は拭えない。次期政権が発足早々、衆院選を控えて対応に手間取る恐れも否めない。
 首相は28日、宣言解除を事前報告するため衆院議院運営委員会に出席。最優先で取り組んできたワクチン接種について、「2回目接種が6割弱に達し、米国を超えた」と成果を誇るとともに、封印を余儀なくされてきた感染対策と経済活性化の「両立」に久々に踏み込んだ。
 国民に自粛生活を強いる緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象がゼロになるのは、4月4日以来半年ぶり。政府高官は全面解除を「政権の成果」と位置付け、「良い形で次期政権にバトンタッチできる」と胸をなで下ろす。
 一時は「爆発的」とまで形容された感染状況は全国的に改善が進み、今月中旬になると、政府内では全面解除も可能との見方が広がった。首相が訪米に出発する直前の22日の関係閣僚との協議は、「宣言解除が前提の意見交換になった」(関係者)という。この時点で既に、出席した閣僚の一人は「全面解除すればいい」と言い切っていた。
 ただ、第5波の沈静化はワクチンの普及などが原因と推測されるものの、「十分に確証を持って理由が言えるところではない」(田村憲久厚生労働相)のが実情だ。それだけに、冬にかけて「第6波は来る」(関係者)との見方は根強い。昨年も秋から年末にかけて感染状況が悪化し、年明け早々、緊急事態発令を余儀なくされた。同じことが繰り返されない保証はない。
 宣言や重点措置が全国一斉に解除されることに伴い、行動制限は段階的に緩和され、飲食店では酒類の提供も再開される。専門家は、感染リスクの増大は避けられないとみて警戒を解いていない。28日の基本的対処方針分科会では、宣言が出されている首都圏や大阪府を中心に、重点措置に移行すべきだとの意見が相次いだ。
 結局、政府側が「感染再拡大の傾向がみられた場合は、重点措置の適用を含め機動的な対応を取る」などと対策の徹底を約束し、了承を取り付けた。退陣間際の政権とあって分科会メンバーも深追いせず、「解除で首相に花を持たせたいのだろう」と推し量った。 (C)時事通信社