【ロンドン時事】英国が深刻な人手不足に陥っている。タンクローリーの運転手が足りず、各地のガソリンスタンドで燃料不足による混乱が起き、運搬代行に政府が軍を出動させる事態に発展。キャベツなど野菜の収穫作業員の求人では時給が30ポンド(約4500円)に高騰した。背景には新型コロナウイルス流行に加え、欧州連合(EU)離脱の影響が尾を引いていることがある。
 燃料をめぐっては、英石油大手BPが運転手不足を理由に一部スタンドの一時閉鎖を表明。その後、ガソリン買いだめの動きが広がり、各地のスタンドで車が長蛇の列をなした。
 業界団体によると、大型トラック運転手の不足人員は推計10万人にも上る。一部地域では食品などの運搬に支障を来し、スーパーの棚が空っぽになった。食品加工業や農業でも労働者が不足し、中部ボストンでは野菜の収穫作業員に時給30ポンド、年収換算で6万2000ポンド(約930万円)が提示されたほどだ。
 人手不足の背景には、コロナ流行で東欧などからの移民労働者が帰国したことに加え、EU離脱後に外国人の就労ビザの要件を厳しくしたことがある。調査会社ユーガブの世論調査では、国民の53%が「EU離脱が悪い方向に進んだ」と回答。ドイツの次期首相候補のショルツ副首相兼財務相も、EU離脱による「労働者の自由な移動」の終了が英国の混乱の原因と指摘した。
 英政府はEU離脱の影響をかたくなに否定しているが、たまらずビザの発給要件緩和に方針転換。トラック運転手5000人分と畜産労働者5500人分について、3カ月間限定で外国人の就労を認めると発表した。ただ、これに対しても産業界からは「規模も範囲も不十分」(英国小売協会)などと批判が殺到している。 (C)時事通信社