糖尿病は慢性腎臓病(CKD)の危険因子であるが、何が糖尿病患者の腎機能低下に影響を及ぼすのか。兵庫医科大学糖尿病内分泌・免疫内科学講座主任教授の小山英則氏らは、前向きコホート研究Hyogo Sleep Cardio-Autonomic Atherosclerosis(HSCAA)のデータを用いて、CKD未発症の糖尿病患者の腎機能低下と関連する要因を検討。その結果、腎機能低下には睡眠の質の低下および自律神経機能障害が有意に関連することが示されたと、Sci Rep2021; 11: 19048)に発表した。

糖尿病患者231例と非糖尿病者523例を解析

 高血圧や脂質異常症といった生活習慣病を背景として発症するCKD。中でも糖尿病は、極めて重要な危険因子である。さらに、近年、睡眠時無呼吸や睡眠の質の低下、自律神経機能障害も、腎機能低下の潜在的なリスクとなる可能性が報告されている。

 糖尿病患者では、睡眠の問題や自律神経機能障害を抱えるケースは少なくないが、これらがCKD未発症例の腎機能に及ぼす影響を検討した研究はほとんどない。

 そこで小山氏らは、前向きコホート研究HSCAAに登録されたCKD未発症の糖尿病患者231例および非糖尿病者523例を対象に、腎機能と睡眠時無呼吸、睡眠の質、自律神経機能との関連を検討した。HSCAAは、同氏らが2010年に睡眠や疲労、自律神経機能などの神経内分泌学的機能が糖尿病やCKD、メタボリックシンドローム、動脈硬化の発症にどのように関与しているかを明らかにする目的で開始した研究だ。腎機能低下は、推算糸球体濾過量(eGFR)が3カ月以上にわたり60mL/分/1.73m2未満となる場合と定義した。追跡期間中央値は38.5カ月だった。

睡眠の質の低下によるCKD発症リスクは2倍超

 解析の結果、CKD未発症糖尿病患者では、睡眠の質の低下と自律神経機能障害がいずれも腎機能低下と有意に関連していた(睡眠の質の低下:P<0.001、自律神経機能障害:P=0.024、log-rank検定)。一方、非糖尿病者では、睡眠の質の低下および睡眠時無呼吸との有意な関連が認められた(全てP<0.001、log-rank検定)。

 多変量Cox比例ハザードモデルで年齢、性、BMI、現在の喫煙状況、心血管疾患の既往歴、高血圧、脂質異常症の有無、HbA1c、登録時のeGFR、アルブミン尿を調整後に解析したところ、CKD未発症の糖尿病患者では、睡眠の質の低下のみが独立した腎機能低下の危険因子として抽出された(ハザード比2.57、95%CI 1.01~6.53、P=0.045)。自律神経機能障害も腎機能低下と関連する傾向が見られた(同2.27、0.94~5.47、P=0.068)。同様に、非糖尿病者では、腎機能低下と有意な関連を示したのは、睡眠の質の低下のみだった(同2.33、1.12~4.84、P=0.022)。

 以上から、小山氏らは「CKD未発症の糖尿病患者では、睡眠の質の低下と自律神経機能障害が、腎機能低下の重要な危険因子であることが示された。腎機能低下予防の観点から、糖尿病患者の睡眠状況や自律神経機能にも着目する必要がある」と結論。今後の課題について「睡眠の質の維持や改善を目指した介入が、腎機能低下予防に寄与しうるかを検討する必要がある」と付言している。

(比企野綾子)