わが国におけるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的勧奨再開に向け、10月1日に開かれた厚⽣科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(厚⽣科学審議会予防接種・ワクチン分化会副反応検討部会及び薬事・⾷品衛⽣審議会医薬品等安全対策調査会、以下、検討部会)の内容を踏まえ、⽇本産科婦⼈科学会と⽇本産婦⼈科医会は同日、「真摯に検討されることを歓迎する」との声明を公式サイトで発表した。安心してHPVワクチンが接種できる体制をさらに充実させていくなどの方針を盛り込んだ「本⽇の厚⽣科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会を受けて、⽇本の⼥性を⼦宮頸がんから守るための声明」としてまとめたもの。(関連記事「MSDが声明、HPVワクチン再開・田村氏発言で

国⺠からワクチンに対する理解が得られるよう関係者とも協同

 今年(2021年)8⽉31⽇、田村憲久厚⽣労働⼤⾂(当時)は記者会見で、HPVワクチンの積極勧奨に向け専⾨家が審議する必要があるとの認識を示した。これを受け、10⽉1⽇に検討部会が開催。HPVワクチン接種に関する課題への対応および、定期接種の積極的勧奨が差し控えられている現状の2点について審議した。

 今回、両学会は検討会で議論された内容を踏まえ「真摯に検討されることを歓迎いたします」と声明で明かした。

 わが国では、2013年4⽉にHPVワクチンが定期接種化されたものの、接種後に広範な疼痛、手足の動かしにくさ、不随意運動などを中心とするさまざまな副反応疑い事例が報告された。報告された症状は、①知覚に関する症状(頭や腰、関節などの痛み、感覚が鈍い、痺れる、光に関する過敏など)、②運動に関する症状(脱力、歩行困難、不随意運動など)、③自律神経などに関する症状(倦怠感、めまい、睡眠障害、月経異常など)、④認知機能に関する症状(記憶障害、学習意欲の低下、計算障害、集中力の低下など)―など多岐にわたる。

 専門家の評価では、HPVワクチン接種後の局所疼痛や不安などが機能性身体症状を惹起したきっかけであることは否定できないとされたが、接種後1カ月以降での発症例については接種との因果関係を疑う根拠に乏しいと指摘している。

 しかし、前述のさまざまな症状への懸念から2013年6⽉、厚労省はHPVワクチンの積極的接種勧奨を中止した。そのため、日本はワクチン接種により子宮頸がん発症の減少が報告されている諸外国から取り残される事態となり、世界保健機関(WHO)のワクチン安全性諮問委員会は2015年、「積極的勧奨を中止したことで若い女性をHPVによるがんリスクにさらしている」との声明を発表した。

 こうした経緯を踏まえ今回、両学会はHPVワクチンの積極的勧奨を再開しなければ、毎年4,000⼈強の新規子宮頸がん患者が発生し、1,000⼈強が死亡するとの大阪大学による試算を紹介。いまや2002年以降に出生した世代のHPVワクチン接種率は1%未満にすぎないという。声明では日本の女性を子宮頸がんから守るため、HPVワクチンの積極的勧奨再開に向け、ワクチンを安⼼して受けられる接種体制をさらに充実させるとともに、国民からワクチンに対する理解が得られるよう関係者とも協同することを盛り込んでいる。

(田上玲子)