千葉大学大学院救急集中治療医学教授の中田孝明氏、同大学病院の今枝太郎氏らJapan Sepsis Alliance(日本敗血症連盟)の研究グループは、日本における敗血症の患者数や死亡者数などの実態を初めて明らかにし、Critical Care2021年; 25: 338)に発表した。2010年から8年間の研究期間中に、年間の敗血症患者は3.3倍、死亡者は2.3倍に増加した一方で、院内死亡率と入院期間は有意に減少した。敗血症は高齢者でリスクが高く、超高齢社会の日本において患者数は増加傾向をたどると推測されるため、ワクチン接種や衛生保持などの感染対策が重要になるとした。

DPCデータを用いて実態調査、全国的なデータなく実態は不明

 敗血症とは、細菌やウイルスなどの感染に対する体の反応が、自らの組織や臓器(心臓、肺、腎臓など)を傷害し、組織障害や臓器障害を来す病態で、ショックや著しい臓器障害が生じると死に至ることがある。

 敗血症の発症率や死亡率に関しては地域間格差があるといわれているが、実態は不明だった。そこで、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本感染症学会が、敗血症の啓発や対策を行うため、日本敗血症連盟を立ち上げ、中田氏らの研究グループがビッグデータを活用して日本の敗血症の実態を調べた。

 同氏らは日本の急性期病院の71.5%をカバーする、1,237施設の診断群分類(DPC)データから、2010年~17年に入院した成人患者5,049万人のデータを抽出。4%に当たる204万3,073例が重篤な感染症および急性臓器機能障害による敗血症と推定され、このうち約36万人が敗血症で死亡した。これらの患者を対象に、敗血症の患者数や死亡者数、死亡率の推移、感染巣、患者背景、治療法などについて解析した。

院内死亡率は25%→18%に減少

 主要評価項目は、敗血症患者の年間発症率および死亡率で、1,000例当たりの発症者数、死亡者数とした。副次評価項目は、敗血症患者の院内死亡率と入院期間とした。

 敗血症患者の年齢中央値は76歳だった。主な併存疾患は、悪性腫瘍(34.9%)、高血圧(26.3%)、糖尿病(21.8%)などで、高血圧や糖尿病の患者数は年々有意に増加していた。感染源としては呼吸器感染症が最多(41.0%)だった。臓器障害は呼吸不全が最も多く、2017年には全体の82.3%(29万3,026例)を占めていた。敗血症患者の17.1%は集中治療室(ICU)入室を要した。入院期間の中央値は29日(四分位範囲16~55日)で、院内死亡率は20.1%であった。

 2010~17年の推移を見ると、年間の入院患者は2010年の約11万人から17年には約36万人と約3.3倍に増加。入院患者全体に占める割合は約3%から約5%となった。

 また、入院患者1,000 人当たりの敗血症の年間死亡者数も、2010年の6.5人から2017 年には7.8人へと増加。敗血症による年間死亡者数は、2017年には5万6,905人で、2010年に比べ2.3倍となった()。一方、院内死亡率は2010年の約25%から17年には18.3%と有意に減少した。

図.日本における敗血症の入院患者に占める発症割合、患者数、死亡者数などの推移(2010~17年)

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(千葉大学のプレスリリースより抜粋)

早期発見、予防ワクチン接種、衛生保持などの感染対策が課題に

 以上の結果を踏まえ、中田氏らは「日本における敗血症の患者数や死亡者数は増加傾向にあるものの、院内死亡率や入院期間は大幅に改善された。この傾向は欧米のデータと一致しているものの、入院患者に占める敗血症患者の割合や死亡者数の割合は高い傾向にある」と結論。その一因について、「日本が超高齢社会を迎えていることが挙げられ、今後も敗血症患者は増加傾向をたどることが推測される」と展望している。

 その上で、重要かつ継続的な問題として、「敗血症発症率を低減するための早期発見、敗血症を引き起こすきっかけとなる感染症を予防するためのワクチン接種、衛生保持などの対策も重要になる」と指摘。敗血症の適切な予防・治療・後遺症対策などについて、今後は行政と共同で構築し実施していく上で、「今回の研究結果は重要な知見となる」としている。

(小沼紀子)