注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬である中枢神経刺激薬メチルフェニデートは、ノルエピネフリンやドパミンなどの神経伝達物質の作用を高めることによりアルツハイマー病(AD)に伴うアパシー(無気力、無関心)の症状を改善させることが期待される。米・Ralph H. Johnson VA Medical Center/Medical University of South CarolinaのJacobo Mintzer氏らは、AD患者を対象にアパシーに対するメチルフェニデートの改善効果を検討する第Ⅲ相多施設プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)ADMET 2を実施。その結果、プラセボに比べてアパシー・スコアの有意な改善が認められたとJAMA Neurol2021年9月27日オンライン版)に発表した。

アパシーを伴うAD患者200例を6カ月追跡

 AD患者に多く見られる神経精神症状の1つであるアパシーは、介護者の負担や医療費の増加、死亡率の上昇に関連する。現時点で有効な治療法はないが、これまでに2件の試験でメチルフェニデートがAD患者におけるアパシーを改善することが示されている。しかし、いずれの試験も小規模で試験期間が短期(6週間と12週間)だった。

 そこでMintzer氏らは、軽度~中等度の認知機能障害を有しNeuropsychiatric Inventory(NPI)で頻回または重症のアパシーと判定されたAD患者200例(年齢中央値76歳、男性66%)を、メチルフェニデート群(99例)とプラセボ群(101例)にランダムに割り付けて6カ月追跡するADMET 2試験を実施した。

 主要評価項目は、アパシーの重症度と介護者の負担度の評価尺度であるNPIアパシー・サブスケールスコアの6カ月時点におけるベースラインからの変化、AD患者の全般的印象評価尺度(Alzheimer's Disease Cooperative Study Clinical Global Impression of Change;ADCS-CGIC)のスコア改善とした。その他の評価項目は安全性、認知機能の変化、QOLとした。

比較的早期からアパシーが改善、効果は6カ月持続

 解析の結果、6カ月時点におけるNPIアパシースコアのベースラインからの低下幅は、プラセボ群の-3.1に比べメチルフェニデート群では-4.5と有意に大きかった(平均差-1.25、95%CI -2.03~-0.47、P=0.002)。

 NPIアパシースコアは投与開始後の最初の100日間で最も大幅に低下し、プラセボ群に比べてメチルフェニデート群ではアパシーの症状が全くない患者の割合が有意に大きかった(調整後ハザード比2.16、95%CI 1.19~3.91、P=0.01)。また、6カ月時点におけるプラセボ群に対するメチルフェニデート群のADCS-CGIC改善のオッズ比は1.90(95%CI、0.95~3.84、P=0.07)だった。したがって、メチルフェニデートは比較的早期からアパシーを改善し、その効果が6カ月間持続することが示唆された。一方、認知機能およびQOLに両群で有意差はなかった。

 安全性の評価では、試験期間中に重篤な有害事象がプラセボ群で10件、メチルフェニデート群で17件発生したが、メチルフェニデートに関連するものはなかった。また、安全性プロファイルに両群で有意差はなかった。

 以上の結果を踏まえ、Mintzer氏らは「メチルフェニデートはAD患者におけるアパシーの減少と関連しており、治療開始後2カ月目から観察され、6カ月以上持続した。有害事象は軽度であり、メチルフェニデートで出現が予想される症状と一致していた」と結論。「メチルフェニデートは前頭前野におけるノルエピネフリンやドパミンの作用を高めることで、アパシーの症状を改善させる可能性がある。AD患者のアパシーを改善し、介護者の負担を軽減できる可能性が示された」と付言している。

(太田敦子)