日本感染症学会は今冬に向けてインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨するとの声明を発表した。今秋以降も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規患者が多数発生することが予想される中、医療現場への負担軽減のためにも予防可能な疾患をワクチン接種で予防することの重要性を指摘している。

今年は大流行の可能性も

 昨年(2020年)8月に日本感染症学会は、インフルエンザとCOVID-19の同時流行を懸念し、冬季に発熱や上気道炎症状を呈する患者に対して両ウイルスの検査を検討することを推奨すると発表した。しかし、実際にはインフルエンザウイルスはほとんど検出されず、同時流行は見られなかった。その原因として、COVID-19対策として講じられた感染対策がインフルエンザにも功を奏したこと、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)にウイルス干渉が生じた可能性を挙げている。

 今冬(2021~22年シーズン)については、昨シーズンのインフルエンザ罹患者数が極めて少なかったため、社会全体の集団免疫が形成されていないと考えられる。こうした状況下で今後、海外との往来が緩和されウイルスが持ち込まれれば、大流行が起こる可能性が懸念される。

 これらを踏まえ同学会は今冬に向けて、インフルエンザ罹患時の合併症リスクが高い人を含めた生後6カ月以降で禁忌でない人全員(危険因子を有する人に接する医療従事者、介護者を含む)に対し、インフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨することを提言した。

 同学会は合併症の高リスク集団として以下を挙げている。

  • 生後6カ月以上5歳未満
  • 65歳以上
  • 慢性呼吸器疾患〔気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)など〕
  • 心血管疾患(高血圧単独を除く)
  • 慢性腎・肝・血液・代謝(糖尿病など)疾患
  • 神経筋疾患(運動麻痺、痙攣、嚥下障害を含む)
  • 免疫抑制状態(HIV感染や薬剤によるものを含む)
  • 長期療養施設入所者
  • 著しい肥満
  • アスピリン長期投与患者
  • 担がん患者

 高齢者のワクチン接種時期については、インフルエンザワクチンの供給が始まり次第、可及的速やかに接種することが望ましいとしている。また高齢者や危険因子を有する人には、インフルエンザ罹患後の続発性細菌性肺炎の予防のために肺炎球菌ワクチンの接種も推奨している。小児では生後6カ月以上5歳未満の高リスク群だけでなく、全年齢の小児に接種することが推奨されるとしている。

 今秋以降も多くの新規COVID-19患者の発生が予想される中、予防可能な疾患をワクチン接種により予防することで、医療機関への受診者を抑制し現場の負担を軽減することも重要だとしている。

 COVID-19罹患者または濃厚接触者におけるインフルエンザワクチン接種の時期については①無症状または軽症で自宅/宿泊療養施設で療養中の罹患者は観察期間終了後、②中等症以上で入院中の罹患者は観察期間終了かつ症状軽快(急性期症状からの完全回復)後、③濃厚接触者は観察期間終了後―を推奨するとしている。

(大江 円)