合併症がない下気道感染症(LRTI)の小児患者に抗菌薬が処方されるケースは少なくないが、有効性を裏付けるランダム化比較試験(RCT)のエビデンスはほとんどない。こうした中、英・University of SouthamptonのPaul Little氏らは、英国のプライマリケア施設を受診した肺炎の疑いがない急性LRTI小児患者において、アモキシシリンの臨床的な有効性は認められなかったとする二重盲検プラセボ対照RCT、ARTIC PCの結果をLancet2021年9月22日オンライン版)に発表した。

英国では小児LRTIの約40%に抗菌薬を処方

 薬剤耐性(AMR)は世界的に公衆衛生上の深刻な問題となっているが、英国も例外ではなく、AMRにはプライマリケアにおける抗菌薬の処方頻度の高さが関係していると指摘されている。中でも、咳嗽などの呼吸器症状でプライマリケアを受診した上気道感染症(URTI)やLRTIの小児患者に対する抗菌薬の処方頻度は依然として高く、Little氏らの観察研究では急性咳嗽およびその他の呼吸器症状を伴う小児患者の約40%に処方されていたことが明らかにされている(Br J Gen Pract 2018; 68: e682-e693)。しかし、小児LRTI患者に対する抗菌薬の使用を支持または否定するRCTのエビデンスはほとんどない。

 そこでLittle氏らは今回、肺炎を伴わない急性LRTIの小児患者に対するアモキシシリンの投与が症状の持続期間などに及ぼす影響について検討する目的で、ARTIC PC試験を実施した。

 対象は、2016年11月9日~20年3月17日に英国の家庭医(GP)56施設を受診した急性の咳嗽を主徴とし、感染症が原因と判断された臨床的に肺炎の疑いがない生後6カ月~12歳の急性LRTI患者432例。アモキシシリン50mg/kg/日を経口投与する群(抗菌薬投与群221例)とプラセボを投与する群(プラセボ群211例)に1:1でランダムに割り付け、7日間投与した。症状や重症度は保護者が記録し、症状ごとの重症度を0点(全く問題なし)~6点(極めて重い)で評価した。主要評価項目は同スコアが3点(やや重い)以上の持続期間とした。

発熱や息切れなどを伴うサブグループでも差なし

 検討の結果、重症度スコアが3点以上の持続期間(中央値)は抗菌薬投与群が5日〔四分位範囲(IQR)4~11日)〕、プラセボ群が6日(同4~15日)と同等であった〔ハザード比(HR)1.13、95%CI 0.90~1.42〕。また、①喘鳴や捻髪音、気管支呼吸音などの胸部徴候、②発熱、③息切れ、④喀痰、⑤医師の評価に基づく状態不良―などを伴う、特に抗菌薬が処方されるケースの多いサブグループの解析においても、主要評価項目に有意差は認められなかった。

 Little氏らは「合併症がないLRTIの小児患者に対するアモキシシリン投与は全体的に有効性に乏しく、抗菌薬が処方されるケースの多いサブグループにおいても同様の結果が示された」と結論。その上で、「LRTIと診断された小児患者に対しては、今後予測される経過や再受診の目安などに関するアドバイスを行うべきであるが、肺炎が疑われない限り抗菌薬は処方すべきでない」との見解を示している。

  • Antibiotics for lower respiratory tract infection in children presenting in primary care in England

(岬りり子)