近年、高所得国ではプライマリケアにおける抗うつ薬の処方数が増加傾向にあり、処方の長期化がその一因であると指摘されている。こうした中、プライマリケアで長期間にわたって抗うつ薬を使用し中止を考慮できるまで改善した患者を対象に、同薬の使用中止と使用継続を比較検討した英国のランダム化比較試験(RCT)ANTLERの結果が明らかになった。同試験では、抗うつ薬の使用を継続した群と比べて中止した群でうつ病の再発リスクが約2倍高いことが示された。英・University College LondonのGemma Lewis氏らがN Engl J Med2021; 385: 1257-1267)に発表した。
※Antidepressants to Prevent Relapse in Depression

150施設478例を解析

 抗うつ薬の使用は長期化しやすいが、使用を中止した後の再発率は高いことが複数のシステマチッククレビューで示されている。しかし、これまでに報告されている試験の多くは、精神科専門施設のうつ病患者を対象に3~8カ月間の抗うつ薬による治療の影響について検討したものであった。

 Lewis氏らは今回、プライマリケアで処方された抗うつ薬を9カ月間以上使用し中止を考慮できる程度まで症状が改善している患者を対象に、抗うつ薬使用の継続と中止の影響について比較検討するため、二重盲検RCTを実施した。

 対象は、英国の家庭医(GP)150施設で処方されたシタロプラム(20mg/日)、セルトラリン(100mg/日)、fluoxetine(20mg/日)、ミルタザピン(30mg/日)を9カ月以上にわたって使用している18~74歳の患者478例(平均年齢54歳、女性73%)。2回以上の抑うつエピソードの既往歴があるか、抗うつ薬を2年以上にわたって使用しており、同薬の使用中止を考慮できる程度まで症状が改善していた。このうち238例が現行の抗うつ薬による治療を継続する群(以下、継続群)、240例がプラセボを投与する群(以下、中止群)にランダムに割り付けられた。

 主要評価項目は52週間の試験期間中のうつ病の再発、副次評価項目は抑うつ症状および不安症状、身体症状、離脱症状などであった。

52週間の再発率は継続群39%、中止群56%

 割り付けられた介入の遵守率は継続群で70%、中止群で52%であった。試験開始から52週後までの再発率は継続群で39%(238例中92例)、中止群で56%(240例中135例)であり、継続群と比べて中止群でうつ病の再発リスクが約2倍高かった〔ハザード比(HR)2.06、95%CI 1.56~2.70、P<0.001〕。また、副次評価項目のほとんどについても同様の結果となり、継続群と比べて中止群では抑うつ症状や不安症状、離脱症状の頻度が高かった。

 Lewis氏らは「今回の試験では、薬理学的プロファイルと作用機序が類似した3種類の選択的セロトニン再取り込み阻害薬と、ミルタザピンについて検討した。そのため、この結果を他のクラスの抗うつ薬にも一般化することはできない」としている。また、その他の試験の限界として、抗うつ薬の使用を中止してもよいと考えている患者のみを対象としていること、英国以外の医療システムの患者や非白人の患者には結果を一般化できないことなどを挙げている。

 その上で、同氏らは「プライマリケアでうつ病の治療を受けている患者のうち、抗うつ薬の使用中止を望む患者において、同薬の使用を継続した患者と比べて中止した患者では、中止後52週間でうつ病を再発するリスクが高かった。抗うつ薬の使用を中止した患者ではQOLの指標や抑うつ症状、不安症状、離脱症状も全般的に悪化していた」と結論している。

(岬りり子)