新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが到来した2020年。オーストラリア・University of QueenslandのDamian F. Santomauro氏らは、世界疾病負担研究(GBD)2020の一環として、COVID-19のパンデミックが及ぼす精神障害への影響を検討。その結果、2020年に世界ではパンデミックに伴い大うつ病性障害患者が5,300万人超、不安障害患者が7,600万人超それぞれ増加したこと、特に女性と若者で影響が大きかったことを明らかにし、Lancet2021年10月8日オンライン版)に発表した。

関連する48件の研究を解析

 精神障害は、世界の疾病負担の主要因である。GBD2019では、精神障害の中でもうつ病と不安障害が二大リスク要因であることが示された。Santomauro氏らは、GBD2020の一環として、COVID-19パンデミックが大うつ病性障害と不安障害に与える影響を検討するシステマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 PubMedなどの医学データベースから2020年1月1日~21年1月29日に公開された論文を検索し、大うつ病性障害と不安障害の有病率を検討した48件(大うつ病性障害46件、不安障害27件)を特定。それらのデータを用いて、パンデミック前とパンデミック下で有病率の変化を国・地域、性、年齢別に算出した。パンデミックの影響の指標は、人流、日々の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率、日々の超過死亡率とした。また、障害調整生存年数(DALY)も算出した。

コロナ下で大うつ病性障害、不安障害とも有病率が25%超上昇

 解析の結果、「人流の抑制」と「日々のSARS-CoV-2感染率」の2つが大うつ病性障害の有病率の上昇と関連することが示された〔人流の抑制:回帰係数(β)0.9、95%不確実性区間(UI)0.1~1.8、P=0.029、日々のSARS-CoV-2感染率:同18.1、7.9~28.3、P=0.0005〕。同様に、不安障害の有病率の上昇とも関連していた(それぞれβ 0.9、95%UI 0.1~1.7、P=0.022、同13.8、10.7~17.0、P<0.0001)。

 COVID-19のパンデミックの影響を国・地域別に解析したところ、大うつ病性障害の人口10万人当たりの有病率は、パンデミック前の2,470.5人(95%UI 2,143.5~2,870.7人)から3152.9人(同2722.5~3654.5人)に上昇(変化率27.6%、95%UI 25.1~30.3%)。パンデミックにより増加した大うつ病性障害の患者数は、全世界で5,320万人(95%UI 4,480万~6,290万人)に上ると推計された。

 一方、不安障害の人口10万人当たりの有病率は、パンデミック前の3,824.9人(95%UI 3,283.3~4,468.1人)から4,802.4人(同4,108.2~5,588.6人)に上昇(変化率25.6%、95%UI 23.2~28.0%)。パンデミックによる患者数の増加は、全世界で7,620万人(95%UI 6,430万~9,060万人)に達すると推計された。

DALYは大うつ病性障害で4,900万超、不安障害で4,400万超

 男女別に解析したところ、女性の方が有意に強い影響を受けていた(大うつ病性障害:β 0.1、95%UI 0.1~0.2、不安障害:同0.1、0.1~0.2、各P=0.0001)。

 年齢による解析では、若年層は高齢層に比べ有意に強い影響を受けていた(大うつ病性障害:β -0.007、95%UI -0.009~-0.006、不安障害:同-0.003、-0.005~-0.0002、各P=0.0001)。

 疾病負担を解析したところ、COVID-19パンデミックによるDALYは大うつ病性障害で4,940万(95%UI 3,360万~6,870万)、不安障害で4,450万(同3,020万~6,250万)だった。

 以上から、Santomauro氏らは「5,300万人超の大うつ病性障害患者と7,600万人超の不安障害患者が、COVID-19パンデミックによるものであることが示唆された」と結論。「コロナ下にあって、世界中でメンタルヘルスへの対応を強化する必要に迫られている」とし、政府および関係当局に対し迅速な行動を求めている。

(比企野綾子)