2019~20年の2年間における川崎病患者の実態を調査した「第26回川崎病全国調査成績」が、日本川崎病研究センター川崎病全国調査担当グループで自治医科大学公衆衛生学教室教授の中村好一氏らによって公開された。川崎病患者数は1990年代半ばから継続的な増加傾向が見られたが、過去最高を記録した前回調査(2017~18年)と比べ、今回の調査では大幅に減少したことが特徴として挙げられる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴う社会的変化が影響を及ぼした可能性があるという(関連記事「川崎病の患者数が過去最高を記録」「解説:今後も川崎病患者の増加傾向は続く」)。

2020年の患者数は前年比35.6%減

 同調査では、小児科を標榜する100床以上の病院および100床未満の小児専門病院に郵送または電子メールで調査票を送付。2019年1月1日~20年12月31日に受診した川崎病初診患者について情報を収集した。調査対象は1,745施設で、1,345施設から有効回答を得た(回答率77.1%)。

 検討の結果、川崎病新規患者数は2019年が1万7,347人(男性9,830人、女性7,517人、)で、過去最高を記録した2018年(1万7,364人)とほぼ同等だった。一方、2020年には1万1,173人(男性6,406人、女性4,767人)と前年(2019年)と比べ大幅に減少(-6,174人、前年比35.6%減)した。

図. 年次別、男女別に見た川崎病の患者数・罹患率

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(第26回川崎病全国調査成績) 

 過去25回の全国調査の報告を含めた累積患者数は、2020年末時点で計42万3,758人(男性24万4,343人、女性17万9,415人)に上った。

 罹患率(0~4歳人口10万対)は2019年が370.8人(男性410.1人、女性329.4人)と第1回調査以来過去最高を記録した。しかし、2020年には患者数の減少を反映して238.8人(同267.3人、208.9人)に減少した。

月別患者数に大きな変化

 その他の注目点として、2020年の月別患者数に例年と比べ大きな変化が見られた。例年(2011~19年)、平均月別患者数は2月と9月に減少が見られる以外は緩やかな曲線を呈していた。しかし、2020年には患者数が3月以降大幅に減少し、6~10月に横ばいになった後、10~12月に増加傾向が見られた。2020年6月以降は、男女とも例年の月別患者数の平均を一貫して下回っていた。

 中村氏らは「2020年の患者数減少は、政府主導で実施された全国一斉の臨時休校要請、緊急事態宣言に伴う全国規模の休校、救援、就業制限、外出自粛が行われた時期と同時期に観察された。したがって、患者数の減少にはCOVID-19の世界的流行に伴う社会的変化が影響した可能性がある」と考察している。諸外国でも、2020年には川崎病患者数の減少が報告されているという。

心障害発生率は減少傾向

 なお今回の調査から冠動脈病変の評価法を改訂したが、初診時、急性期、後遺症における心障害の発生率はいずれも、前回調査(2017~18年)とほぼ同等だった。急性期における心障害の発生率は、1997~98年(第15回調査)では20.1%だったが、その後は経年的に漸減傾向をたどり、今回は8.3%まで低下した。同様に川崎病で問題となる後遺症も、同期間に7.0%→2.5%と低下した。

MIS-Cの発生はほとんどない

 2019年に「川崎病診断の手引き改訂6版」が17年ぶりに改訂されたことに伴い、今回調査から新たにBCG接種歴と接種部位の発赤、川崎病主要6症状の出現頻度に関する項目が加えられた。さらに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査状況も調査された。PCR/抗原検査は2,595人に実施され、陽性と判定された患者は4人(0.2%)だった。欧米ではSARS-CoV-2感染に続発して川崎病様症状を呈する小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)が多数報告されている。しかし「今回の調査結果から、日本では2020年末までにMIS-C/PIMSはほとんど発生していないことがうかがえた」としている。

(大江 円)