KDDI、KDDI総合研究所、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は合同で調査を行い、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがスマートフォン(スマホ)依存、ゲーム障害、ネット依存に及ぼす影響について検討。COVID-19パンデミック前(以下、コロナ前)と比べてパンデミック中(以下、コロナ禍)にはスマホ利用時間が増え、ゲーム障害やネット依存傾向の割合が1.5倍以上上昇したことを明らかにした。調査結果の一部は、ATRの岡大樹氏を筆頭研究者としてJ Psychiatr Res(2021; 142: 218-225)に発表された。

スマホ利用時間は増加

 スマホやゲーム、インターネットなどの過度の利用には依存症のような状態に陥るリスクがある。外出自粛や観光施設の閉鎖など自宅で過ごすことを強いられるコロナ禍において、スマホ依存およびゲーム障害は学力低下や体調不良、家族関係でのトラブル増加といった問題を引き起こすことが懸念される。

 そこで岡氏らは、コロナ前(2019年12月)とコロナ禍(2020年8月)でスマホ依存、ゲーム障害、ネット依存のデータを比較し、それらがどのような推移・傾向を示すかを調べた。調査は全国の成人男女(20〜69歳)5万1,043人を対象に2020年8月にオンラインで実施。そのうち2019年12月の調査にも参加した3,938人の結果と比べた。

 検討の結果、コロナ禍においてスマホ利用時間は増加したが、スマホ依存傾向を示す人の割合はわずかに減少した(コロナ前21.5%→コロナ禍20.8%、図1)。スマホ依存スケール(1〜6点)の項目のうち、"スマホ使用のため、予定していた仕事や勉強ができない"の平均値が低下した一方、"スマホを手にしていないとイライラしたり、怒りっぽくなる"は上昇していた(図2)。

図1. スマホ利用時間(左)とスマホ依存傾向を示す人の割合(右)の変化

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図2. スマホ依存スケール項目の変化

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 同氏らは「"予定していた仕事や勉強ができない"の項目が低下したのは、COVID-19パンデミックに伴う外出自粛、テレワーク普及など各種オンライン化によってスマホの利用機会が増え、スマホが仕事や勉強を妨げる存在から生活上の重要な存在に変化し、スマホに対する問題意識が薄れたことが要因の可能性がある」と考察。その一方で、"イライラしたり、怒りっぽくなる"の項目が上昇した点については、スマホが使えない状況になった場合、コロナ禍ではパンデミック前と比べてストレスを感じやすくなったことが示唆されるという。

収束後も持続した問題となる可能性

 コロナ前と比べ、コロナ禍ではゲーム障害およびネット依存傾向がある人の割合は、1.5%以上増加していた(図3-左)。また、ゲーム障害の中核的な症状である"耐性"(より高難度のゲームを望むようになり、プレー時間を増やさないと満足できない)と"離脱症状"(ゲームをプレーしていないとイライラしてしまう)の割合も増加した(図3-右)。これらの症状があると、プレー時間の長さに問題を感じてもやめるのが困難で、治療にも時間がかかるとされる。

図3. ゲーム障害・ネット依存傾向の割合とゲーム障害症状の割合の変化

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(図1〜3ともプレスリリースを基に編集部作成)

 岡氏らは「ゲーム障害に関しては、症状の傾向から一過性の問題ではなく、COVID-19パンデミック収束後も持続した問題となる可能性が示唆された。さらに、COVID-19患者は非患者に比べゲーム障害を来すリスクが5.67倍であることも確認された」と説明。ゲーム障害やネット依存傾向の増加は、COVID-19パンデミックによるストレスが一因と考えられる。特にCOVID-19患者では、罹患による多大なストレスがゲーム障害のリスク増大につながった可能性がある。

 同氏らは「今回の研究でスマホ依存、ゲーム障害、ネット依存はパンデミックなどの環境変化に強く影響されることが分かった。今後も継続的に調査を行って適切なスマホ利用の啓発を促す」とし、「2024年度以降に提供開始予定のスマホ依存軽減アプリの開発にも知見を活用したい」と展望している。

(慶野 永)