【ワシントン時事】13日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、インフレ圧力が、新型コロナウイルス禍からの回復途上にある世界経済の下振れリスクに浮上した。G20は中銀が物価動向を監視し、適切に対処することで一致した。一方、多国籍企業の税逃れを防ぐ新たな国際課税ルールをめぐっては、閣僚レベルでの支持を表明。国際課税原則の約100年ぶりの転換にこぎ着けた。
 「靴に石が入ったまま歩いている」。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、インフレのリスクを抱えた景気回復をこう表現した。石油などエネルギー価格が世界的に高騰。日本でもガソリン価格が7年ぶりの高値圏に突入し、電気料金の上昇も見込まれる。緊急事態宣言解除で上向きかけた消費者の心理を冷やしかねない。
 米国での2021年の消費者物価上昇率は物価目標(2%)を上回る4.3%と見込まれる。米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測から、日本円を含め世界中で対ドルの通貨安が進行。資源輸入国は輸入コスト上昇でさらに物価上昇圧力が高まるという悪循環が広がりつつある。
 インフレの背景にあるのは、ワクチン普及の格差だ。接種が進んだ国では需要が急回復しているのに対し、東南アジアなどではコロナ感染症による生産や物流の混乱で部品供給網の目詰まりが続く。解決には全世界でのワクチン接種の加速が不可欠で、G20は共同声明で低・中所得国でのワクチンの不足などに「今後数カ月で対処する」と強調した。
 一方、8日の経済協力開発機構(OECD)交渉会合で、法人税率引き下げ競争に終止符を打つとともに、巨大IT企業の税逃れを封じる「歴史的な合意」に達した。今後は23年からの新ルール導入へ、各国・地域が必要な条約締結や国内法改正を進められるかが課題だ。鈴木俊一財務相は「合意内容の実施に向け、引き続き各国と協調していきたい」と意気込んだ。
 最大の焦点は与野党対立が続く米国の動向だ。イエレン財務長官はG20を受け、「国際課税の大変革へ作業を続ける」と議会の説得へ決意を示した。しかし米国で準備が進まなければ、欧州勢は先行導入したデジタルサービス税の撤回を渋る恐れもあり、歴史的合意の実行には一抹の不安が残る。 (C)時事通信社