細胞培養法で製造したインフルエンザ不活化4価ワクチン(IIV4C)は、2~18歳の健康な小児および青少年における季節性インフルエンザの発症予防に有効性を示した。オーストラリア・University of MelbourneのTerence Nolan氏らは、IIV4Cの小児・青少年におけるインフルエンザ発症予防効果を検証する第Ⅲ/Ⅳ相国際共同試験の結果をN Engl J Med2021; 385: 1485-1495)に発表した。

8カ国で3シーズンの効果を検証

 従来の孵化鶏卵培養法で製造されたワクチン製造用インフルエンザウイルスでは卵馴化による変異が生じ、季節性インフルエンザワクチンに含まれる不活化株と流行株の抗原性にミスマッチが生じる可能性がある。一方、細胞培養法で製造したワクチン製造用インフルエンザウイルスは、卵馴化による抗原変異を回避し、抗原性を世界保健機関(WHO)のインフルエンザワクチン選定株と完全に一致させるように設計されていることから、より高い発症予防効果が期待できる。さらに細胞培養法を用いるとインフルエンザパンデミック時に生産量および生産速度を高めることが可能となる。例年、世界人口の5〜15%が季節性インフルエンザに罹患し最大で65万人が呼吸器関連死しており、死亡リスクは小児、高齢者、慢性疾患患者で死亡リスクが最も高い。

 Nolan氏らは今回、イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来細胞株Madin-Darby Canine Kidney (MDCK)細胞培養により制作したIIV4Cを用い、2~18歳の小児に対するインフルエンザ発症予防効果を検証する国際共同第Ⅲ~Ⅳ相試験を実施した。

 2017~19年の3シーズンに8カ国(オーストラリア、フィリピン、タイ、エストニア、フィンランド、リトアニア、ポーランド、スペイン)で登録した2~18歳の参加者4,514人(平均年齢8.8歳、女性48.5%)をIIV4C群または対照群に1:1でランダムに割り付けた。IIV4C群ではIIV4Cを、対照群ではプラセボ〔髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)〕を全員が1回接種、2~9歳の参加者には29日目に2回目を接種し、最低180日間追跡して有効性と安全性を評価した。インフルエンザ様症状を呈した参加者は、鼻腔拭い液検体を用いてインフルエンザウイルスの存在を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)とウイルス培養で確認。主要評価項目はRT-PCRとウイルス培養で確定された最初のインフルエンザとした。Cox比例ハザードモデルで年齢、国、インフルエンザワクチン接種歴、季節などを調整した生存時間解析により、IIV4Cの有効性を算出した。

 全体の65.9%は過去にインフルエンザワクチン接種を受けており、50.7%が2~9歳だった。

有効性は54.6%

 有効性の解析対象は、IIV4C群が2,257人、対照群が2,252人、インフルエンザ感染はそれぞれ175人(7.8%、3シーズンの発症率6.5~10.2%)と364人(16.2%、同15.2~17.4%)で確認された。

 生存時間解析の結果、IIV4Cのインフルエンザ発症予防効果は54.6%(95%CI 45.7~62.1%)と算出された。インフルエンザウイルスのサブタイプ別に見ると、A/H1N1型で80.7%(69.2~87.9%)、A/H3N2型で42.1% (20.3~57.9%)、B型で47.6%(31.4~60.0%)だった。

 年齢、性、人種、インフルエンザワクチン接種歴で分類したサブグループ解析においてもIIV4Cは一貫して有効性を示した。

有害事象発現率は対照群と同等

 有害事象発現率はIIV4C群と対照群で同等だった。ワクチン接種後6時間から7日にIIV4C群の51.4%、対照群の48.6%に有害事象が認められた。38℃以上の発熱はそれぞれ5.3%、4.5%、40℃以上の発熱は0.3%と0.2%、重篤な有害事象は1.1%と1.3%に認められた。ワクチンに関連した有害事象と判定されたものはなく、試験中止に至ったものもなかった。

 以上を踏まえ、Nolan氏らは「IIV4Cは2~18歳の健康な小児・青少年においてインフルエンザワクチン接種歴の有無にかかわらずインフルエンザ発症予防効果を示した」と結論。その上で「今回の研究は細胞培養インフルエンザワクチンの有効性は最年少で2歳の小児から発揮されることを示した初めてのものである」と述べている。

(大江 円)