新型コロナウイルスワクチンの接種が進んでいることを受け、接種者を対象とする旅行の特典プランが広がりだした。接種者限定のツアーや宿泊施設での利用券配布、特別列車などを用意。各社は安心して旅行できる工夫を凝らして需要を掘り起こし、コロナ禍からの回復を目指す。
 クラブツーリズム(東京)は、出発14日前までの接種完了を条件にしたツアーを今月下旬に始める。緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の全面解除を追い風に「先々の予約も多く入っている」(担当者)という。8月下旬の発表時の商品数は26だったが、好評のため64に拡充した。
 日本旅行(東京)は、接種完了者に宿泊施設で使える3000円分の利用券を配布するプランを売り出した。ホテルモントレ(大阪市)は「安心してゆっくり滞在してほしい」(担当者)との思いから、通常料金で滞在時間を最大28時間まで延長できたり、格上の部屋を利用できたりする宿泊プランを設定した。落ち込んでいた予約状況は上向いているという。
 鉄道や航空業界も利用拡大を狙う。JR東日本は、接種済みかPCR検査で陰性の人専用の新幹線を来年運行する。ANAホールディングスと日本航空は今月から、特典付き旅行商品に加え、空港店舗での買い物への割引を始めた。中堅のソラシドエア(宮崎市)も抽選でマイルを付与する。
 ただ、各社の感染再拡大への懸念は根強い。昨年秋に需要を押し上げた政府の観光支援事業「Go To トラベル」は、感染者の増加で昨年末に中止を余儀なくされた。全日本空輸の井上慎一専務は「第6波に備える必要があり、楽観は決してできない」と指摘する。各社とも感染対策に万全の態勢で臨む考えだ。 (C)時事通信社