うつ病を中心とした精神疾患の治療に導入されている反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法。依存症治療への期待が高まる中、イスラエル・Ben-Gurion University of the NegevのAbraham Zangen氏らは、禁煙治療後に喫煙を再開した経験を持つ喫煙者を対象に、rTMSと偽刺激(シャム)の禁煙治療効果を検討する二重盲検ランダム化比較試験(RCT)を実施。rTMS療法群では禁煙継続率が有意に高かったとの結果を、World Psychiatry2021; 20: 397-404)に報告した。

対象は禁煙失敗経験を持つ22〜70歳の男女262例

 rTMS療法は、記憶や認知、意欲や判断に関連する脳領域である背外側前頭前野を磁気によって非侵襲的かつ反復的に直接刺激する治療法である。日本では治療抵抗性うつ病に対する治療法として、2019年に薬事承認され現在、双極性障害など他の精神疾患に対する有効性および安全性が検討されている。一方、海外ではニコチン依存を含む物質使用障害への有効性が動物実験や小規模サンプルで報告されている。

 そこでZangen氏らは、rTMS療法を導入した禁煙治療の有効性を検討する多施設共同二重盲検RCTを実施。対象は米国12施設およびイスラエル2施設で2014年8月〜19年8月に登録された22〜70歳の喫煙習慣(1年以上・10本/日以上)を有する262例。米国精神科医学会の『精神疾患の分類と診断の手引 第5版(DSM-5)』で「タバコ使用障害」の診断基準を満たすことを条件とし、禁煙治療中や他の精神疾患を有する者などは除外した。

 262例をrTMS療法群(123例)と偽刺激(シャム)群(139例)にランダムに割り付けた。対象の主な背景は女性がrTMS療法群48.8%、シャム群47.5%、平均年齢がそれぞれ45.0歳、44.8歳、喫煙開始年齢が16.9歳、17.4歳、喫煙総年数が27.1年、26.2年であった。全例に禁煙を試みた経験があり、3回以上の経験を持つ者は68%以上を占めた。禁煙期間については1週間以内がそれぞれ26.7%、26.1%と最多を占め、1年以上は16.7%、21.7%であった。

 禁煙治療は両群とも週5回のセッションを3週間行い、毎日の喫煙日誌(毎週提出)と尿検査によるコチニン値の測定を実施し、4週間継続禁煙率(four-week continuous quit rate;CQR)を評価した。その後は追加で週1回のセッションを6週まで続け、6週時に禁煙を継続していた場合は18週まで追跡した。

rTMS療法群で18週間後も効果は持続

 主要評価項目である6週時および18週時のCQRはシャム群の6.4%に対し、rTMS療法群では25.3%といずれも有意に高かった(X2=11.885、P=0.0006)。18週までの長期の追跡では禁煙継続率はrTMS療法群63%、シャム群50%と同様の結果であった(X2=8.46、P=0.003)。intention-to-treat集団においても、18週時のCQRはシャム群に比べrTMS療法群で有意に高いことが分かった(8.7% vs. 19.4%、X2=5.655、P=0.017)。

 さらに、喫煙本数および喫煙渇望評価(tobacco cravinf questionnaire;TCQ)についても両群で比較した。その結果、1週当たりの喫煙本数の減少はrTMS療法群で有意に大きく(両群の補正後平均差15.01本、95%CI 2.17〜27.85本、P=0.022)、1週当たりのTCQの低下もrTMS療法群で有意に大きかった(同5.71点、0.62〜10.81点、P=0.028)。なお、有害事象については頭痛(rTMS療法群24.4%、シャム群18.0%)が最も多く、従来のrTMS療法で報告されるものであった。

 今回の結果から、Zangen氏らは「rTMS療法がタバコ使用障害に対する安全かつ効果的な治療法であることが示唆され、物質使用障害治療へのrTMS療法の導入を支持する結果が得られた」と結論。「rTMSは渇望に関連する脳の神経回路に直接作用し、他の物質使用障害治療にも役立つ可能性がある」と結んでいる。

松浦庸夫