ベルギー・University of AntwerpのSven M. Francque氏らは、肝硬変を伴わない活動性の高い非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者を対象に、NASHの発症機序において重要な役割を果たす3種類のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を活性化させるpan-PPARアゴニストであるlanifibranorの有効性と安全性を第Ⅱb相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験で検討。その結果、lanifibranor 1日1回1,200mgの24週間投与はプラセボに比べて肝硬変を伴わない活動性の高いNASHの疾患活動性を有意に低下させたとN Engl J Med2021; 385: 1547-58)に発表した。lanifibranorはファーストインクラスのNASH治療薬候補として期待されており、今回の研究結果から「NASHによる肝臓の炎症を軽減し、線維化応答を改善する多面的な作用メカニズムが示唆される」としている。

対象はNASH患者247例、8割弱は中等度・高度に肝線維化

 NASHは、飲酒や肝炎ウイルスへの感染などの原因がないにもかかわらず、肝臓に脂肪沈着、炎症、線維化を特徴とする肝疾患で、肝硬変や肝細胞がんに進行することがある。確立された薬物治療はない。

 NASHに対しては糖尿病治療をはじめさまざまな薬剤の開発が進められているが、そのうち有望視されている薬剤候補の1つが脂質代謝や炎症において調節的役割を果たす核受容体であるPPARを標的とするlanifibranorである。

 同試験では、肝硬変を伴わない活動性の高いNASH患者247例(平均年齢53.6歳、女性58%)を登録し、lanifibranor 1,200mg群(83例)、同薬800mg群(83例)、プラセボ群(81例)に1:1:1でランダムに割り付けて24週間治療した(いずれの群も1日1回投与)。103例(42%)が2型糖尿病、188例(76%)が中等度または高度な肝線維化を有していた。

 治療前後で、肝細胞の風船様変性および炎症のスコアを含む、肝脂肪変性・活動性・線維化(SAF)評価システムの活動性項目(SAF-A)のスコア(範囲0~4、高スコアほど疾患活動性が高い)を算出した。

1,200mg群で有意な活動性低下、800mg群ではプラセボと差なし

 主要評価項目は、24週時点におけるSAF-Aスコアの肝線維化の進展を伴わないベースラインから2ポイント以上の低下とした。

 副次評価項目は、NASH消失(風船様変性グレード0かつ小葉内炎症グレード1以下)および1段階以上の線維化ステージ改善の複合エンドポイントなどとした。

 解析の結果、主要評価項目を達成した患者の割合は、lanifibranor 1,200mg群(55%)ではプラセボ群(33%)に比べて有意に高かった〔リスク比(RR)1.69、95%CI 1.22~2.34、P=0.007〕。しかし、同薬800mg群(48%)ではプラセボ群と有意差がなかった(同1.45、1.00~2.10、P=0.07)。

両用量で線維化の進展を伴わないNASH消失を達成

 副次評価項目の結果は、lanifibranor 1,200mg群/800mg群ともにプラセボ群に比べて良好であった。具体的には、①線維化の進展を伴わないNASH消失の達成率:プラセボ群の22%に対しlanifibranor 1,200mg群では49%(RR 2.20、95%CI 1.49~3.26)、同薬800mg群では39%(同1.70、1.07~2.71)、②NASH悪化を伴わない1段階以上の線維化ステージ改善の達成率:プラセボ群の29%に対しlanifibranor 1,200mg群では48%(同1.68、1.15~2.46)、lanifibranor 800mg群で34%(同1.15、0.72~1.85)、③NASH消失と1段階以上の線維化ステージ改善の複合の達成率:プラセボ群の9%に対しlanifibranor 1,200mg群では35%(同3.95、2.03~7.66)、同薬800mg群では25%(同2.57、1.20~5.51)ーだった。

 また、lanifibranor 1,200mg群/800mg群ともに肝酵素値がプラセボ群と比べて大幅に低下し、大部分の脂質、炎症、線維化のバイオマーカーが改善した。

下痢、悪心、末梢性浮腫、貧血、体重増加が増加

 有害事象による脱落率はlanifibranor1,200mg群(4%)、同薬800mg群(5%)、プラセボ群(4%)のいずれも5%未満と同等であった。大部分の有害事象は軽度~中等度で、重篤な有害事象の発現率は各群4%だった。

 ただし、lanifibranor群ではプラセボ群に比べ下痢(lanifibranor 1,200mg群12%、同薬800mg群10%、プラセボ群1%)、悪心(同8%、10%、4%)、末梢性浮腫(同8%、6%、2%)、貧血(同7%、1%、0%)、体重増加(同8%、10%、0%)の発現率が高かった。

 末梢性浮腫は、lanifibranor群の各群2例ずつ計4例(2%)に生じ、プラセボ群では認められなかった。うち1例では重度の末梢性浮腫が生じたが、12日間の1,200mgレジメンを中止後に回復した。また体重増加に関しては、lanifibranor 1,200mg群で平均2.7kg(3.1%)のベースラインからの増加が観察され、同800mgでは平均2.4kg(2.6%)の増加が見られた。貧血はlanifibranor 1,200mg群の6例(7%)で報告され、ヘモグロビン値は鉄の補充またはlanifibranorの投与中止後に元の値に戻った。プラセボ群ではベースラインからヘモグロビン値が1%減少したのに対し、lanifibranor群では5~6%の減少が見られた。

 以上の結果を踏まえ、Francque氏らは「活動性NASH患者を対象にした第Ⅱb相試験において、線維化の進展を伴わない2ポイント以上のSAF-Aスコア低下を達成した患者の割合は、プラセボ群に比べてlanifibranor 1,200mg群で有意に高かった」と結論。「今回の試験は対象の94%が白人だったため、第Ⅲ相試験では対象を他の人種/民族にも拡大し、より長期の有効性および安全性を検討する必要がある」と付言している。

(太田敦子)