スウェーデン・Karolinska InstitutetのRita Bergqvist氏らは、同国の大規模住民登録データに基づく研究の結果、スタチンの使用は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)死亡率の低下に関連しており、この関連に年齢、性、COVID-19リスクによる著明な差はないことをPLoS Med(2021; 18: e1003820)に報告した。今回の知見は、スタチン治療がCOVID-19の重症化・死亡に対し若干の予防効果を有する可能性を示唆している。

45歳以上約96万人のデータで検討

 スタチンはコレステロール合成に関与するHMG-CoA還元酵素を阻害し、血中LDLコレステロール値を低下させる。その他にも、免疫調節、血管内炎症の抑制、血管内皮機能改善、血小板凝集の抑制、血栓リスクの抑制、線維素溶解の促進、動脈硬化性プラークの安定化といった多面的効果を持つことが知られている。

 こうしたことからスタチン治療とCOVID-19死亡率との関連が論じられているが、これまでの観察研究ではデザイン上の問題もあり一貫した結果が得られていなかった。Bergqvist氏らは、観察研究の短所を克服するために対象をスタチン新規開始患者に限定し、観察データでランダム化比較試験(RCT)を模倣するtarget trial emulationの手法を用いた。

 スウェーデンの全国処方登録から45歳以上のストックホルムの全住民(96万3,876人、女性51.6%)におけるCOVID-19パンデミック前(2019年3月1日~20年2月29日)のスタチン新規処方を抽出。2020年3月1日~11月11日まで追跡し、COVID-19による死亡を全国死因登録で確認、多変量Cox回帰モデルによりスタチン使用者におけるCOVID-19死亡のハザード比(HR)を算出した。

死亡で12%のリスク低下

 16万9,642人(17.6%)がスタチンを使用していた。スタチン使用者には、高年齢(71.0歳 vs. 58.0歳)、男性が多い(男性53.3% vs. 女性46.7%)、合併症診断率が高い(例えば虚血性心疾患23.3% vs. 1.6%)、抗凝固薬および降圧薬使用率が高い、大卒が少ない(34.5% vs. 45.4%)、可処分所得が少ない(20.6% vs. 25.2%)、密な住環境の割合が低い(6.1% vs. 10.3%)といった特徴が見られた。

 追跡期間中に全体で2,545人がCOVID-19により死亡した。内訳はスタチン使用者が765人(全体の0.5%)、非使用者が1,780人(同0.2%)だった。

 性、年齢、出身国、学歴、可処分所得、居住地、密な住環境、施設居住、降圧薬・抗凝固薬使用、併存疾患を調整後の解析で、スタチン使用はCOVID-19死亡率の低さ(調整後HR 0.88、95%CI 0.79~0.97、P=0.01)に関連していた。

 この関連に年齢層、男女、COVID-19リスク群による差は認められなかった(それぞれ、コクランのQ=0.82、0.66、0.73)。

 Bergqvist氏らは「スタチン治療はCOVID-19死亡と弱い逆相関を示した」と結論。「現在のパンデミックは、限られた知識を基に政策・治療の判断を行うという特殊状況をつくり出しているが、RCT不在の中で、今回の研究はなんらかの指針となるだろう。特に、パンデミック下でも、心血管疾患・脂質異常症などの病態に対し、現行の推奨に従いスタチン治療を継続することを支持している」と付言している。

(小路浩史)