31日に投開票日を迎える衆院選で憲法改正をめぐる議論が低調だ。積極的だった安倍政権時代から首相の交代を重ね、機運が下がったことが大きな要因。新型コロナウイルス対策や経済政策に関する舌戦が熱を帯びる一方、岸田文雄首相(自民党総裁)をはじめ各党党首は改憲にほとんど言及していない。
 「コロナ対応、経済対策、外交・安全保障の切り口で新しい時代を切り開く」。首相は27日、東京都北区で街頭演説し、この3分野への取り組みをアピール。約15分間かけて詳しく語り、憲法改正にはいつも通り一言も触れなかった。
 首相の演説は2019年参院選での安倍晋三首相(当時)と対照的だ。安倍氏はそれまでの選挙で憲法問題を積極的に取り上げず、「改憲隠し」と批判されることもあった。だが、19年は争点化を図り、各地で「改憲を議論する政党か議論すらしない政党か」と二者択一を迫った。
 自民党は安倍政権時を踏襲し、今回も早期改憲を公約の柱に据える。首相も先の総裁選中の記者会見で「総裁任期中に実現を目指したい」と明言。今月14日の記者会見では、国会発議に必要な3分の2の議席確保は目標としない考えを示しつつ「選挙で憲法をしっかり訴えたい」と語った。
 ただ、実際に選挙戦で改憲を口にしたのは、18日の日本記者クラブ主催討論会で問われ、「国民が求める改正を実現すべく努力したい」と答えた程度。周辺は言及を控える理由を「有権者に響かないから」と説明する。自民党の保守系からは「熱意が感じられない」と不満も漏れる。
 与党第1党の党首が旗振り役だった時からの変化を踏まえ、賛否にかかわらず他党も公約などでの扱いは小さい。
 立憲民主党は公約本体の「政権政策」に憲法を盛り込まず、160ページ以上ある「政策集」に記しただけ。枝野幸男代表は「コロナ禍で憲法に膨大な政治的エネルギーを使っている余裕はない」と解説。実際、27日の宇都宮市の街頭演説では憲法に一切触れなかった。
 公明党も憲法を「重点政策」に盛らず、「政策集」の末尾に小さく記載。共産党の志位和夫委員長、日本維新の会の松井一郎代表、国民民主党の玉木雄一郎代表は、街頭演説で憲法を取り上げないケースが目立つ。積極的に語るのは「護憲」を前面に掲げる社民党の福島瑞穂党首くらいだ。 (C)時事通信社