毎年、冠動脈バイパス術(CABG)に関する全国アンケートを実施している日本冠動脈外科学会は10月18日、2020年度の調査結果を公式サイトで発表した。調査では、単独CABGのうち初回待機手術となった心拍動下CABG(off-pump CABG)の実施割合が、3年連続で60%未満にとどまっていることなどが明らかにされた(関連記事「Off pump CABG施行率が68%と過去最高に」)。

初回待機CABGは前年比減、非待機CABGは前年比増

 今回のアンケート結果は、全国599施設から寄せられた回答に基づくもの。

 2020年に実施されたCABG総数は1万7,975例、単独CABGは1万1,172例で、それぞれ前年(2019年)比8%減、11%減であった。

 また、単独CABGの内訳は初回待機CABGが7,585例、非待機CABGが3,587例で、前者は前年(2019年)比25%減であったのに対し、後者は前年比50%増であった。

 初回待機CABGにoff-pump CABGが占める割合は57%(4,286例)で、2018年、2019年に続き、3年連続で60%を割り込んでおり(図1)、60%を超えていた2004~17年との違いが鮮明となった。

図1. 初回待機CABGに、off-pump CABGが占める割合

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 なお、単独CABG施行例全体における30日死亡率、手術死亡率はそれぞれ1.8%(前年1.7%)、2.8%(前年2.8%)で前年と大差なく、off-pump CABG施行例、on-pump CABG施行例のいずれにおいても前年と大差はなかった。

 虚血性心疾患の状況別に死亡率を見ると、左冠動脈主幹部+1枝病変例が2.56%と最も高く、次いで術前冠動脈造影非実施例1.53%、左冠動脈主幹部病変例1.28%、左冠動脈主幹部+3枝病変例1.22%の順であった。

グラフトは左内胸動脈が42%で最多

 CABGに用いたグラフトは、左内胸動脈が全体の42%(10万407本)を占めていた(2)。

図2. CABGに用いたグラフトの内訳

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(図1、2とも日本冠動脈外科学会発表資料を基に編集部作成)

 さらに、術式別に脳卒中の発生率も算出。心拍動下(on-pump beating CABG)および心停止下のon-pump CABG例ではともに3%、off-pumpからon-pumpへ移行したCABG例では2.4%、off-pump CABG完遂例では1.3%と、off-pump CABG完遂例に比べて心拍動下および心停止下のon-pump CABG例で有意に高かった(P<0.001)。

 その他、アンケートでは急性心筋梗塞による合併症に関する回答も集計。左室乳頭筋断裂例(58例)の30日死亡率、手術死亡率はそれぞれ17.2%、27.6%、左室自由壁破裂例(270例)のうち急激にショック状態となるblow out型(94例)では54.3%、61.7%で、左室動脈瘤例(17例)では死亡の報告はなかった。

 僧帽弁閉鎖不全については、各術式の30日死亡率、手術死亡率を比較。僧帽弁形成術施行例(228例)では6.1%、11.0%、僧帽弁置換術施行例(155例)ではそれぞれ10.3%、15.5%と、僧帽弁形成術の方が良好な成績を示した。

(陶山慎晃)