腎盂腎炎などの尿路感染症は、入院の契機となる感染症として肺炎に次ぎ2番目に多いといわれるが、日本では同疾患の入院例に対する大規模な検討は実施されていない。そこで、国立国際医療研究センター国府台病院総合内科診療科長の酒匂赤人氏らは10月21日、東京大学などと共同で実施した、尿路感染症入院患者約23万人を対象とする全国規模の調査の結果を発表。同疾患の発症率や患者の特徴、死亡率などを明らかにした。詳細はBMC Infect Dis(2021; 21: 1048)に掲載されている。

1万例当たりの入院発生率は70歳代20回、80歳代60回に上昇

 調査では、診療群分類包括評価(DPC)データベースを用い、2010~15年に退院した約3,100万人のうち、尿路感染症や腎盂腎炎の診断により入院した15歳以上の患者23万人のデータを後ろ向きに検討した。なお、入院する例がまれである膀胱炎例は除外した。日本での年間入院患者数を推定し、患者の特徴や治療内容、死亡率とその危険因子などを解析した。対象の平均年齢は73.5歳で、女性が64.9%を占めた。

 解析の結果、年齢や性にかかわらず、入院患者は夏に多く、冬と春に少ないという季節変動が見られた。

 また、入院の発生率は人口1万人当たり男性全体で6.8回、女性全体で12.4回だった。入院発生率は高齢になるほど高くなり、70歳代では1万人当たり約20回、80歳代では約60回、90歳代以上では約100回に上った()。

図. 尿路感染症による入院患者数と入院回数

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(国立国際医療研究センタープレスリリース)

 入院初日に使用した抗菌薬の割合は第三世代セフェム系が37.9%で最も高く、ペニシリン系21.6%、第二世代セフェム系18.5%、カルバペネム系10.7%の順であった。さらに、集中治療室入室例は2%、結石や腫瘍による尿路閉塞に対し尿管ステントを要した例は8%であった

BMI低値なども死亡の危険因子

 さらに解析では、入院日数の中央値が12日、医療費の中央値は43万円、入院中の死亡率は4.5%であったことも示された。

 入院中における死亡の危険因子としては、男性、高齢、小規模病院および市中病院への入院、冬の入院、合併症が多い・重度、BMI低値、入院時の意識障害、救急搬送、播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、腎不全、心不全、心血管疾患、肺炎、悪性腫瘍、糖尿病治療薬の使用、ステロイドや免疫抑制薬の使用などが挙げられた。

 これらの結果について、酒匂氏は「尿路感染症による死亡の危険因子としては、従来指摘されていた年齢や免疫抑制薬の使用などの他にも、BMI低値をはじめとしてさまざまな要因が存在することが判明した」と述べている。

 なお、研究の限界としては、①DPCデータに症状や血液検査の結果が含まれていない、②病名の妥当性を検証できていない、③DPC参加施設は比較的規模の大きな病院に偏っているため、日本全体を反映しているとはいえない-点などを挙げている。

 しかし、同氏は「尿路感染症入院例に関する大規模データは今までに類例がないため、適正な診療や医療政策を検討する上で有用な知見である」と強調している。

(陶山慎晃)