【ワシントン時事】昨年の米大統領選挙から3日で1年。大統領選で勝利し、議会上下両院で民主党が優位の「トリプルブルー」を達成したバイデン大統領だが、新型コロナウイルス禍の影響や、アフガニスタン戦争終結に伴う混乱で世論の風当たりは厳しさを増す。党内の意見集約すら苦戦するさまに、米国の「団結」を呼び掛けたバイデン氏の求心力には早くも陰りが見える。
 米社会の分断を深めたトランプ前大統領との対決を制したバイデン氏は「ビルド・バック・ベター(より良い再建)」をスローガンに、1月の就任直後から矢継ぎ早に経済対策を打ち出した。傷ついた社会からの再生を目に見える形で示す狙いだった。
 コロナ対策として現金給付を盛り込んだ法案を成立させ、ワクチン接種も加速。好スタートを予感させたが、夏にデルタ株が猛威を振るい感染が再拡大すると、支持率はじりじりと下降に転じた。
 さらにアフガンからの駐留米軍撤収や南部国境への移民殺到と難題が重なった。原油価格の高騰などに伴うインフレ高止まりや、サプライチェーン(供給網)の障害も経済の先行きに影を落としつつある。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の世論調査では8月以降、不支持が支持を上回る状態が続く。
 民主党内に目を転じれば、歳出拡大を訴える急進左派と、共和党との合意を重視する中道派の対立が激化。看板政策に掲げた環境・社会保障の大型歳出法案は当初の3.5兆ドル(約400兆円)から1.75兆ドルに規模半減を迫られた。バイデン氏は「歴史的な枠組みだ」と強がったが、中間層を意識した有給休暇補助や富裕層課税は抜け落ち、指導力に疑問符を残した。
 コロナ対策でバイデン氏は、連邦職員らに対するマスクやワクチン接種の義務化という強力な権限を行使した。これに「選択の自由」を重視する保守層が猛反発。共和党知事を擁する複数の州が連邦政府を提訴するなど、州政府との反目も顕在化している。
 昨年の大統領選は「トランプ前大統領の信任投票」(ワシントン・ポスト紙)と評された。派手さのないバイデン氏の勝利は、社会の分断に疲れ、落ち着きを求める国民の声を反映していた。政権浮揚の材料に乏しい中、リーダーシップを発揮できないまま来年11月の中間選挙で議会優位を失えば、バイデン氏の影響力は一気にそがれる可能性がある。 (C)時事通信社