新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種が世界で最も進んでいるイスラエルでは、昨年(2020年)12月にファイザー製のワクチン(トジナメラン)の集団接種を開始し、いったんは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が収束したかに見えたが、今年6月以降SARS-CoV-2感染者が急激な増加を見せている。同国・Technion-Israel Institute of TechnologyのYair Goldberg氏らは、今年7月11日~31日のSARS-CoV-2感染者および重症COVID-19患者の発生状況を解析した結果、早期にワクチン接種を済ませた者ほど感染率が高かったとN Engl J Med2021年10月27日オンライン版)に発表した。インド型変異(デルタ)株が流行の主体を占めるようになったことに伴うワクチンの有効性の低下、ワクチン接種によって獲得した免疫の減弱が再流行に関与している可能性があるという。

6月時点で感染例の98%がデルタ株

 イスラエルでは昨年12月にトジナメランの集団接種を開始し、成人人口の約半数が3カ月以内に2回接種を完了した。世界でも最も感染予防が進んでいるとみられていた同国だが、今年7月から8月にかけてコロナの再感染や重篤なCOVID-19患者が急増したことが報告された。

 イスラエルにおける年齢別のSARS-CoV-2ワクチン接種スケジュールは、医療従事者などの優先接種対象でない限り、60歳以上は今年1月中旬、40~59歳は2月中旬、16~39歳は3月初旬に、それぞれ2回目接種開始(ワクチン接種完了)とされている。

 Goldberg氏らは同国保健省のデータベースから、今年6月1日以前にワクチン接種を完了した16歳以上の479万1,398例を抽出し、交絡因子を調整したPoisson回帰モデルによる解析に組み入れた。ワクチン接種完了の時期および年齢別(16~39歳、40~59歳、60歳以上)に、7月11日~31日の研究期間におけるSARS-CoV-2感染および死亡を含む重症COVID-19の発生率を検討した。

 その結果、全体でSARS-CoV-2感染が1万3,426例発生し、うち重症COVID-19は403例だった。なお、6月時点で同国におけるSARS-CoV-2感染例の98%からデルタ株が検出された。

全年齢の早期接種者で感染および重症例が増加

 研究期間中のSARS-CoV-2感染発生率は、いずれの年齢層でもワクチン接種完了の時期が早い者ほど高かった。具体的には、60歳以上で最早期の1月接種完了群は、2カ月後の3月接種完了群に対し1.6倍〔率比(RR)1.6、95%CI 1.3~2.0倍)〕。40~59歳で最早期の2月接種完了群は、2カ月後の4月接種完了群に対し1.7倍(同1.7、1.4~2.1倍)。16~39歳で最早期の3月接種完了群は、2カ月後の5月接種完了群に対し1.6倍(同1.6、1.3~2.0)だった。

 重症COVID-19についても同様の傾向が見られた。年齢別ワクチン接種スケジュールの最早期(60歳以上は1月、40~59歳は2月)の接種完了群は、3月接種完了群と比べて重症COVID-19の発生率が高く、60歳以上で1.8倍(RR1.8、95%CI 1.1~2.9)、40~59歳で2.2倍(同2.2、0.6~7.7)に上った。16~39歳は、重症COVID-19の症例数が少ないためRRを算出できなかった。

デルタ株に対する免疫は2回接種後数カ月で減衰

 Goldberg氏らは、SARS-CoV-2感染の再拡大の理由として、第一にデルタ変異株が流行の主流を占めるようになったことに伴うワクチンの有効性の低下、第二にワクチン接種によって獲得した免疫の減衰を挙げている。なおイスラエルや米国、オーストラリアからは、SARS-CoV-2ワクチンの2回目接種から6カ月間で中和抗体価が低下するといった報告もある(関連記事「コロナワクチン、こんな人が抗体価低下」)。

 研究の限界として「今回の解析では、免疫の減弱によるブレークスルー感染の寄与と、英国型変異(アルファ)株からデルタ株への流行株の変化に伴う寄与を区別できなかった」点を指摘。その上で「今回の知見は、ワクチン接種によるデルタ株に対する免疫が、全ての年齢層で2回目接種の数カ月後には減弱していたことを示すものだ」と結論している。

 今回の結果を受け、イスラエル保健省は5カ月以上前にトジナメランを接種完了した者に対する3回目接種(ブースター接種)を承認している。

(太田敦子)