【パリ時事】フランスで、互いの頬を合わせるあいさつのキス文化に異変が起きている。新型コロナウイルスの感染拡大後、衛生面からキスをする人は一時激減。感染状況が落ち着いてからも避ける人が少なくなく、コロナ禍を機に伝統のキス文化が衰退する可能性も指摘されている。
 仏政府は感染防止策として、あいさつのキスや握手を控えるよう要請。肘を合わせる動作などが取って代わった。
 調査会社IFOPが10月中旬に公表した世論調査結果によると、家族や知人、同僚にあいさつのキスをすると答えた人は、1回目のロックダウン(都市封鎖)直前の昨年3月上旬は91%だったのに対し、今年3月上旬は39%に減少。9月下旬には65%に増えたものの、コロナ禍前の水準には戻っていない。
 ワクチン接種が進む中、今夏以降、感染者数も大幅に減少。人々が競技場でスポーツ観戦に興じたり、飲食店でマスクを着けずに密集して大声で話しながら酒を飲んだりするコロナ禍前の光景が日常的になったが、キス文化は戻りが鈍い。人類学者のマルタンジュシャ氏は今月4日付の仏紙パリジャンに、「在宅勤務が一般的になった新型コロナの影響で、会社内での人間関係が一層希薄になった」ことも背景にあると分析した。
 保険会社に勤務する40歳代のカトリーヌさんはパリジャンに、「キスの文化が恋しいとは思わない」と強調。コロナ前は毎朝、職場の同僚とあいさつのキスを交わしていたといい、「ひげがチクチクしたり、他人の化粧が付いたりするのが嫌だった」と打ち明けた。
 10月中旬以降、感染者数は増加に転じており、仏政府はキスを含む他者との接触を控えるよう改めて要請。パリジャンは「時間がたってもキスの文化は戻ってこないだろう」と予測している。 (C)時事通信社