米・George Mason UniversityのFarrokh Alemi氏らは、全米のうつ病患者360万例超を網羅的な医療記録に基づく多数のサブグループに分類し、最適な抗うつ薬の処方と寛解を予測するモデルを作成。このモデルにより適切な抗うつ薬を処方でき、寛解率が最大1.5倍に向上する可能性を示した。同氏らは、詳細をEClinicalMedicine2021年10月25日オンライン版)に報告するとともに、知見を活用した抗うつ薬の選択支援ウェブサイト「Me Again Meds」を開設し、無料公開している。

医療記録を基に1万6,770のサブグループに分類

 抗うつ薬は米国で最も多く使用されている薬剤の1つで、人口の11%が服薬している一方で、うつ病患者の過半数で初回治療薬が奏効しないという報告もある(Indian J Psychiatry 2017; 59: S34-S50)。処方パターンを改善するために、ガイドライン作成や遺伝的因子の分析などが行われてきたが、効果的な薬剤選択に結び付いていない。

 Alemi氏らは、抗うつ薬の効果の低さは、各薬剤の効能よりもむしろ主に患者背景に起因する薬剤選択のミスマッチが原因であると考え、個々の患者のあらゆる併存疾患や投薬歴を含む完全な医療記録に基づき、最適な抗うつ薬処方と寛解を予測できるモデルの作成を試みた。

 2001年1月1日~18年12月31日に、全米50州で最も一般的な15種類の抗うつ薬による単剤治療を受けたうつ病患者367万8,082例(平均年齢46.54±17.48歳、平均追跡期間2.93年)・1,022万1,145件の医療記録を抽出。寛解の予測因子または処方に影響を及ぼしうる因子1,000個を同定し、対象を1万6,770のサブグループに分類した。

予測精度の高いモデルが完成

 この1万6,770の患者サブグループによる予測モデルは、医師の処方パターンを高精度に予測し〔相互検証後の受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)82.0%(範囲77~90%)〕、症状寛解を中等度に予測できた〔同72.0%(69.5%~78%)〕。Alemi氏らによると、この成績は既存のランダム化比較試験の結果に反し、同じ抗うつ薬でもサブグループごとの寛解率に有意差があることを示している。

 Breslow-Day均一性検定の結果、サブグループ間でオッズ比の均一性は認められず(α<0.0001)、患者の医療記録に基づきサブグループを差別化できていることが示された。

 処方パターンと寛解率に関して一例を挙げると、年齢と性のみで分類した10のサブグループ()では、最も効果的な薬剤選択をした場合の寛解率は、最も効果が低い場合の平均20.45倍だった。

表. サブグループ別に見た抗うつ薬の寛解率(一部抜粋)

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EClinicalMedicine 2021年10月25日オンライン版

 これらのサブグループで全ての患者に最適な抗うつ薬が処方された場合、平均寛解率は50.78%に達し、現状30.30%の1.5倍となり、寛解エピソードは160万8,914件増加すると推算された。

 今回の知見には、現行の抗うつ薬選択基準と一致していない部分もあり、直ちに患者への適用はできないことが想定される。そこでAlemi氏らは、患者が質問に答えていくことで、今回のモデルに基づく最適な薬剤を提示するウェブサイト「Me Again Meds」を構築し、無料公開している。同氏は「このサイトの推奨を患者が臨床医と共有することで、適切性が評価されることを期待している」とコメントしている。

(小路浩史)