川崎医科大学腎臓・高血圧内科学准教授の長洲一氏、横浜市立大学病院次世代臨床研究センター准教授の矢野裕一朗氏らの共同研究グループは、SGLT2阻害薬の腎保護効果を検証するため、国内の慢性腎臓病(CKD)患者のリアルワールドデータを解析。その結果、他の糖尿病治療薬に比べSGLT2阻害薬は、投与開始前の蛋白尿や推算糸球体濾過量(eGFR)にかかわらず、腎機能低下速度を遅延させ、末期腎不全(ESKD)への進展を抑制させたと、Diabetes Care2021; 44: 2542-2551)に報告した。

従来のRCTは特定の患者に限定、臨床実態反映が不十分

 SGLT2阻害薬の血糖降下作用とは独立した腎保護効果はこれまでに複数のランダム化比較試験(RCT)で示されている。しかし、いずれも蛋白尿を有する、ACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を併用している特定の患者を対象としており、またベースライン時の腎機能の程度が加味されていなかったため、日常診療で遭遇するより幅広い層の患者にも当てはまるか明らかでなかった。

 そこで長洲氏らは、全国の大学病院21施設から、18歳以上で蛋白尿が+1以上、またはeGFRが60mL/分/1.73m2未満のCKD患者が登録されている包括的CKD臨床効果情報データベース(J-CKD-DB)を活用。このうち5施設が参加し、CKD患者で腎機能低下の危険因子を特定するためeGFRの推移が記録されている縦断研究J-CKD-DB-Exから、SGLT2阻害薬および他の糖尿病治療薬を投与中のCKD患者を抽出し、腎保護効果を比較、検証した。

主要評価項目はeGFR低下率、副次評価項目は腎複合イベント

 解析対象は、SGLT2阻害薬または他の糖尿病治療薬を開始する1年以上前に登録された2型糖尿病患者のうち、投与開始前にeGFRを最低2回測定し、開始日から180日以内にeGFRを最低1回測定した患者とした。

 治療開始日は、SGLT2阻害薬(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン)またはその他の血糖降下薬(配合剤を含む)について、初回治療または追加治療として処方箋が発行された日とした。指標日から治療の終了、他の血糖降下薬またはSGLT2阻害薬の投薬開始、離脱、データ収集の最終日まで追跡した。

 主要評価項目はeGFRの年間低下率、副次評価項目は腎複合イベント〔eGFRの50%以上の低下またeGFR 15 mL/分/1.73m2未満(ESKD)〕とした。

SGLT2 阻害薬がeGFR低下を有意に抑制

 傾向スコアマッチング法を用いて、年齢、性、HbA1C、eGFRなどをマッチングしたSGLT2阻害薬群および他の血糖降下薬群を各1,033例抽出した。ベースラインの平均年齢は64.4歳、女性は37.6%、平均HbA1cは7.8%、平均eGFRは68.1mL/分/1.73m2で、蛋白尿が578例(28.0%)に認められた。ACE阻害薬/ARB併用例は926例(44.8%)だった。

 追跡期間(平均±標準偏差)は、SGLT2阻害薬投与群が21.0±9.8カ月、他の血糖降下薬投与群が19.5±10.4カ月であった。

 解析の結果、eGFR低下率は、SGLT2阻害薬群では平均-0.47mL/分/1.73m2/年(95%CI 0.63~-0.31mL/分/1.73m2/年)、他の血糖降下薬投与群では-1.22mL/分/1.73m2/年(同-1.41~-1.03mL/分/1.73m2/年)だった〔両群間差0.75mL/分/1.73m2/年(同0.51~1.00mL/分/1.73m2/年)〕。投与開始後のeGFRのベースラインからの変化量の群間差は0.75mL/分/1.73m2/年(95%CI 0.51~1.00mL/分/1.73m2/年)と、SGLT2阻害薬群でeGFR低下が有意に抑制された(P<0.001)。

 平均24カ月の追跡期間中にeGFRの50%以上の低下およびESKDへの進行を含む腎複合イベントは全体で103件発生した。内訳を見ると、SGLT2阻害薬群は30件(1,000患者・年当たり14件)、他の糖降下薬投与群は73件(同36件)と、SGLT2阻害薬群で有意に低かった(ハザード比0.40、95%CI 0.26~0.61)。

 SGLT2阻害薬群の腎保護効果は、年齢(65歳未満/以上)、投与開始前の蛋白尿の有無やeGFR低下速度、CKDの重症度(GFR区分G3a未満/以上)、ACE阻害薬/ARBの使用の有無にかかわらず、一貫して認められた(P≧0.35)。

 今回の解析対象では、蛋白尿陰性例が約7割、ACE阻害薬/ARBを併用しない例が半数超を占め、日本国内の診療実態を反映するものだったという。以上の結果を踏まえ、長州氏らは「解析で示されたSGLT2阻害薬の腎機能に対する有益性は、日常診療で遭遇する集団にも当てはまり、その効果が腎機能低下や蛋白尿の有無によって変わるという根拠はない」と結論している。

(今手麻衣)