新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの追加接種(ブースター接種)が前向きに検討される中、ワクチンの効果の持続性は注目されるところだ。横浜市立大学病院感染制御部部長の加藤英明氏らは、SARS-CoV-2のファイザー製ワクチン(トジナメラン)を接種した医療従事者を対象に免疫の長期的な推移を検討。その結果、ワクチン接種6カ月後に全例で抗体が検出されたが、抗体価は大半で接種3週後のピーク時と比べ約90%減弱すること、中和抗体価は約80%減弱し中和抗体陽性率は85.7%になること、細胞性免疫は維持されることが明らかになったと、査読前論文公開サイトmedRxiv2021年10月30日オンライン版)に発表した。

6カ月後の中和抗体価が80%減弱

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に対する打開策として、日本でもワクチン接種が進められ、11月3日時点で全人口の73.6%が必要回数のワクチン接種を完了している。トジナメランやモデルナ製ワクチンの接種により液性免疫や細胞性免疫が得られ、両者の相乗効果でウイルス感染や重症化が顕著に抑制されることが知られている。しかし、日本人を対象にこれらの免疫の長期的な持続性を検討した報告は限られる。

 そこで加藤氏らは、トジナメランの2回目接種から6カ月が経過した同院の医療従事者98例(男性24例、女性74例、年齢中央値43歳)を対象に、免疫の長期的な持続性を検討。血液検査によりSARS-CoV-2抗スパイク蛋白質に対する抗体価(IgG抗体価)、中和抗体価(NT50)を定量的に測定した。さらに、CD4陽性またはCD8陽性T細胞(免疫細胞)数を測定し、細胞性免疫応答の強度を評価した。対象のうち、飲酒習慣ありは32例、現喫煙者は5例、ブレークスルー感染者は4例だった。

 解析の結果、IgG抗体の幾何平均抗体価(GMT)は2回目接種3週間後の97.0(95%CI 81.6~115.4)に対し、6カ月後では6.8(同5.4~8.4)と約90%減弱した。

 多変量解析を行ったところ、年齢および飲酒習慣とIgG抗体価の間に有意な負の相関が認められ、高齢、飲酒習慣ありの者では6カ月後のIgG抗体価が有意に低かった(高齢:β=-0.0099、95%CI -0.018~-0.002、P=0.012、飲酒習慣あり:同-0.1839、-0.332~-0.036、P=0.015)。

 6カ月後の中和抗体陽性率は85.7%だったが、中和活性の指標となるNT50のGMTはワクチン接種3週間後の680.4(95%CI 588.0~787.2)に対し、6カ月後では130.4(同104.2~163.1)と約80%減弱した。

 ブレークスルー感染例では、非感染例と比べIgG抗体価(146.1~459.1)、中和抗体価(1,631~8,756)がいずれも高く保持されていた。

IgG抗体価と細胞性免疫応答に弱い正相関

 ワクチン接種6カ月後の免疫細胞数は、中央値で84/106PBMC(範囲0~700/106PBMC)。IgG抗体価と細胞性免疫応答の間には弱い正相関が認められた(r=0.216、P=0.033)。細胞性免疫応答の強度と年齢、性、飲酒や喫煙習慣の有無との相関はなかった。

 以上を踏まえ、加藤氏らは「ワクチン接種から6カ月後、抗体は大半の者で陽性ながらピーク時と比べて顕著に減弱することが示された。また、経時的評価は行っていないものの、ワクチン接種により誘導された細胞性免疫は、6カ月程度維持されることが示唆された」と結論。その上で、「今回の調査は98例と小規模だが、ワクチン接種6カ月後の免疫状況の一端が明らかになった。今後も検討を続けていく予定だ」との意向を示している。

(比企野綾子)