進行性の眼疾患である老視(老眼)。多くは40歳前後から日常生活が妨げられ、残りの人生を老眼鏡とともに過ごすことになる。近年、老眼を改善する治療薬の開発が進められており、10月28日に1日1回投与で老眼を改善する初めての点眼薬pilocarpine(商品名Vuity)が米食品医薬品局(FDA)に承認された。

国内では緑内障または縮瞳に対する薬剤として承認済み

 Pilocarpineは米・アッヴィの子会社であるアイルランド・アラガンが開発したムスカリン性コリン受容体作動薬。ピロカルピン(商品名サンピロ)は、日本では緑内障または診断・治療を目的とする縮瞳を効能・効果として保険適用されている。

 老眼では、加齢に伴う水晶体の弾性力の喪失や毛様体筋の衰えにより、近くの物体に焦点を合わせる能力が低下する。しかし、pilocarpineを点眼することで瞳孔の大きさが縮小し、遠方視力に影響を与えることなく近方視力と中間視力の改善が期待できるという。点眼から15分程度で効果が現れ、最大で6時間程度持続するとされる。なお、コンタクトレンズを装用している場合は外して点眼するが、10分後に再装用できるという。

 FDAの承認はpilocarpineの有効性、安全性、忍容性を評価した第Ⅲ相ランダム化比較試験GEMINI1およびGEMINI2のデータ(750例、年齢40~55歳)に基づく。両試験において、pilocarpine群ではプラセボ群と比べて遠方視力を失うことなく薄明視(低照度)条件での近方視力を有意に改善し、重篤な有害事象は認められなかった。主な有害事象は頭痛と眼の充血だった。

 なお、11月12〜15日にニューオーリンズで開催される米国眼科学会(AAO) 2021(ウェブ併催)では、前述の2試験のプール解析および患者報告アウトカムをはじめとする臨床試験結果が報告される予定である。

(安部重範)