衆院選を受けて再出発した岸田文雄首相の最大の課題は、新型コロナウイルスの感染再拡大を食い止めつつ、疲弊した経済を再生させることだ。来年夏に参院選を控える首相は短期間で実績を積み上げたい考えだが、国民が実感できる成果を出せなければ厳しい評価を受ける可能性もある。
 「政治空白は一刻も許されない。スピード感を政策実行に発揮すべく全力を挙げていく」。首相は10日の記者会見で、第2次内閣の取り組みをこう説明した。
 首相が経済面で進めるのは、自民党総裁選や衆院選で掲げた「新しい資本主義」の具体化だ。小泉改革以降の新自由主義的政策が国民の格差を拡大したと主張。アベノミクスを修正し、政府も関与して「成長と分配の好循環」を実現することで、分厚い中間層の再構築を目指す。
 成果を急ぐ首相は衆院選投開票前の10月26日に「新しい資本主義実現会議」を初開催。今月8日にはいち早く緊急提言を取りまとめた。9日には実現会議と連携して「新しい資本主義」を肉付けする4会議も設置し、10日には子どもへの10万円相当給付などで公明党と合意した。
 19日には緊急提言や給付金を盛り込んだ経済対策を決定し、2021年度補正予算案を年内に成立させたい考えだ。
 とはいえ、こうした取り組みが経済再生につながるかは未知数だ。緊急提言では賃上げ企業の税制支援や看護・介護・保育の収入増など、安倍・菅政権の延長線の施策が目立った。閣内からは「新味がない」との声が漏れる。
 さらに不透明感が強いのがコロナ感染の先行きだ。8月に2万5000人を超えた国内の1日当たりの感染者数は200人前後まで減少した。しかし、欧州では世界保健機関(WHO)が「世界的大流行の震源地」と警告するほど感染が再拡大しており、日本でも「第6波」の懸念が強まる。
 首相は12日、3回目のワクチン接種や経口治療薬の実用化などを網羅したコロナ対応の全体像を示し、国民の不安解消に努める。ただ、コロナ対応は安倍晋三元首相や菅義偉前首相の退陣の遠因となった「鬼門」。再び医療逼迫(ひっぱく)などを招けば、批判が強まることも予想される。 (C)時事通信社