世界有数の透析大国である日本では、近年、高齢の透析導入患者が増えている。透析導入を減らす手はあるのか。大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの芦村隆一氏らは、大阪府寝屋川市と共同で腎機能検査の有無と末期腎不全による透析導入リスクとの関連を検討する後ろ向きコホート研究を実施。40歳以上の市民6万9,000例超を5年間追跡したところ、過去1年間に健診や医療機関での腎機能検査を受けていない高齢男性は透析導入リスクが高いことが明らかになったと、Sci Rep2021; 11: 20717)に発表した。

対象を健診と医療機関での腎機能検査の有無で3群に分類

 末期腎不全による透析療法の導入を予防するには、腎臓病の早期発見が重要である。腎臓病の早期発見には健診が大きな役割を果たすが、特定健診、後期高齢者健診の受診率はそれぞれ50%、30%と高くない。

 健診の非受診者は死亡リスクが高いことが知られているが、末期腎不全との関連は不明である。そこで芦村氏らは、国保データベースから40歳以上の寝屋川市民6万9,147例のデータを抽出。2012年度の健診と医療機関での腎機能検査(尿定性、血清クレアチニン値)の有無で、①健診あり群、②健診なし/腎機能検査なし群、③健診なし/腎機能検査あり群―の3群に分け、腎機能検査の有無と末期腎不全による透析導入との関連を検討した。

検査なし男性の透析導入リスクは1.66倍、75歳以上では2.72倍に

 傾向スコアマッチングにより、健診あり群と健診なし/腎機能検査なし群を比較。中央値で5.0年の追跡期間中に、男性(各群5,332例)では、健診あり群の11例(0.2%)、健診なし/腎機能検査なし群の24例(0.5%)が透析に至った〔サブハザード比(SHR)2.30、95%CI 1.13~4.70〕。女性(各群7,573例)では、それぞれ6例(0.1%)、9例(0.1%)が透析に至った(SHR 1.54、95%CI 0.55~4.33)。

 多変量解析を行ったところ、男性では健診あり群(9,474例)と比べ、健診なし/腎機能検査なし群(9,833例)の透析導入リスクは1.66倍と有意に上昇(調整後SHR1.66、95%CI 1.04~2.65、交互作用のP=0.014)。さらに、75歳以上に限定したところ、リスクは2.72倍に達した(同2.72、1.39~5.33)。

女性では透析導入リスクに有意差なし

 女性では、健診あり群(1万4,145例)と比べ、健診なし/腎機能検査なし群(1万311例)の透析導入リスクは1.51倍に上昇したが、有意差はなかった(調整後SHR 1.51、95%CI 0.70~3.24、交互作用のP=0.131)。75歳以上では、男性で見られたリスクの上昇は認められなかった(同0.84、0.29~2.41)。

 芦村氏らは「過去1年間に健診や医療機関で腎機能検査を受けていない男性は、特に75歳以上で透析導入リスクが高いことが示された。末期腎不全予防の観点から、高齢男性に対しては健診の受診を積極的に勧奨することが望まれる」と結論。女性の透析導入リスクが男性ほど高くなかった点について「心血管疾患および代謝性疾患には性差が存在すると考えられるが、より大規模な研究で検討する必要がある」と付言している。

(比企野綾子)