睡眠と心血管イベントの関係をめぐっては、これまで多くの研究が行われているが、入眠時刻と心血管イベントの関連を大規模集団で検討した研究は少ない。英・Huma TherapeuticsのDavid Plans氏らは、UK Biobankの登録者を対象に入眠時刻とその後の心血管イベントを検討。入眠時刻が22~23時の集団で心血管イベントのリスクが最も低いとする結果をEuropean Heart Journal - Digital Health2020年11月8日オンライン版)に発表した。

解析対象は8万8,000人

 UK Biobankは、遺伝や環境が疾患に及ぼす影響を調査する長期大規模コホート研究で、2006~10年に英国在住で37~73歳の50万人以上が登録されている。今回の検討では、UK Biobankの登録者10万3,712人に手首装着型の加速度計を送付。このうち、データを正しく収集できなかった者、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、心血管イベントの既往やデータ収集中のイベント発生者などを除外した8万8,026人(平均年齢61.43歳、女性57.9%)を対象とした。

 対象者は加速度計を7日間にわたり装着、睡眠時間、睡眠の不規則性、入眠時刻を記録し、入眠時刻と心血管イベントの関連を検討した。心血管イベントは、心筋梗塞、心不全、慢性虚血性心疾患、脳卒中、一過性脳虚血発作の初回発生とした。

 全体の入眠時刻を見ると、22時以前が3,446人、22~22時59分が1万6,975人、23~23時59分が3万5,884人、24時以降が3万1,721人であった。入眠時刻別に見た平均睡眠時間および睡眠の不規則性の平均時間は、22時以前が6.5時間と3.2時間、22時~22時59分が6.5時間と2.1時間、23時~23時59分が6.2時間と2.0時間、24時以降が5.5時間と2.8時間だった。

 また、4つの時間帯のうち、24時以降において、喫煙率、糖尿病または高血圧の既往歴が最も多かった。

イベントリスクは入眠時刻でU字型カーブ

 平均5.7年追跡した結果、全体の3.58%で心血管イベントが発生した。入眠時刻別に見ると、22時以前が4.2%、22時~22時59分が15%、23~23時59分が38%、24時以降が43%だった。100人・年当たりの心血管イベント発生数は、22時以前で3.82、22~22時59分で2.78、23~23時59分で3.32、24時以降で4.29と、入眠時刻と心血管イベントリスクにはU字型の関係が見られた。

 22~22時59分を参照として心血管イベントのハザード比(HR)を見ると、22時以前で1.38(95%CI 1.24~1.53、P< 0.005)、23~23時59分で1.11(同1.00~1.24、P=0.05)、24時以降で1.35(同1.12~1.64、P<0.005)と、いずれもリスクが有意に上昇していた。睡眠時間と睡眠の不規則性を調整したモデル、および心血管の危険因子を調整したモデルでも同様の傾向を示し、いずれのモデルでも短時間睡眠および睡眠の不規則性が心血管イベントの上昇に寄与していた。

 感度分析を行ったところ、女性では22時以前(HR 1.34、95%CI 1.11~1.61、P<0.005)、および24時以降(同1.63、1.20~2.21、P<0.005)で有意に心血管イベントリスクが高かった一方で、男性では22時以前(同1.17、1.01-1.35、P=0.03)のみ有意差が認められた。

 Plans氏は、入眠時刻が24時以降の集団で心血管イベントリスクが高かった要因として「体内時計がリセットされる朝日を浴びる機会が少ないことが関係している可能性がある」と指摘。また、女性で心血管イベントリスクが高かった要因については、「さまざまな理由が考えられるがはっきりしたことは分からない」と述べている。さらに研究の限界として、入眠時刻が22時以前の対象者はその他の時刻に比べて極端に少なかったことに触れた。

 その上で、「入眠時刻が心血管イベントの危険因子となりることが示された。他の検討でも同じ結果が得られれば、入眠時刻の調整という低コストで実現できる心血管イベント低減策になりうる」と期待を示した。

(編集部)