11月12日の「世界肺炎デー」を前にファイザーが行ったメディアセミナーで、慶應義塾大学感染症学教室教授の長谷川直樹氏が「肺炎に対する意識・実態調査」の結果を紹介。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下で高齢者の肺炎に対する危機・予防意識が向上する一方、患者と医師にコミュニケーションギャップが見られたことを明らかにした。

3分の2が「ワクチンで予防できる疾患はワクチンで予防したい」

 肺炎は日本人の死因の第5位で、肺炎死亡者の96%以上を65歳以上の高齢者が占めている。市中肺炎の原因菌としては肺炎球菌が最も多いことから、肺炎球菌性肺炎の予防が重要となっている。

 こうした中、ファイザーは基礎疾患を有する65歳以上の高齢者200人および日常的に成人へのワクチン接種を行っている医師200人を対象に「肺炎に対する意識・実態調査」を実施。

 調査の結果、高齢者の89.5%がCOVID-19流行以降「肺炎は命に関わる疾患」と認識し、75.5%が予防の必要性を感じていた。肺炎球菌ワクチン未接種者の56.6%が接種を希望し、そのうち76.6%が「ワクチンで予防できる疾患はワクチンで予防したい」と回答した。

 さらに高齢者の72.0%が肺炎球菌ワクチン接種について医師からの説明を希望し、41.5%が説明を受けた上で自ら決定したいと考えていた。しかし、自ら医師に相談したのは36.0%にとどまった。

 長谷川氏は「COVID-19流行により高齢者の肺炎に対する危機意識、予防意識が高まっているにもかかわらず、なかなか医師に相談できない現状が推察された」と説明した。

肺炎球菌ワクチンについて医師から説明を受けたのは35%

 一方、医師の52.0%が肺炎ワクチンという選択肢を患者に与え、接種の決定は患者が行うべきと考え、半数以上が65歳以上の患者に肺炎球菌ワクチンの説明をし(51.0%)、接種を推奨している(53.0%)と回答した。

 しかし、高齢者のうち実際に肺炎球菌ワクチンについて医師から説明を受けたのは35.0%、接種を勧められたのは27.5%とギャップが見られた。

 長谷川氏は「肺炎球菌ワクチン接種については、患者と医師の両者が『医師から説明を受けて患者自身が自己決定することが望ましい』と考えているものの、両者にコミュニケーションギャップが認められた」と指摘した。

 現在、肺炎球菌ワクチンには作用の異なる2種類、23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV23)と13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が存在する。PPSV23は肺炎球菌の莢膜多糖体のみを含むワクチンで、接種後5年で再接種する必要がある。現在、PPSV23は主に65歳以上を対象とした予防接種法に基づく定期接種および任意接種が行われている。

今冬は2つのワクチン接種が必要

 PCV13は莢膜多糖体にキャリア蛋白を加えたワクチンで、ヘルパーT細胞、ナイーブB細胞をより効率に刺激し、B細胞を活性化、抗体産生を促進する。PCV13は、65歳以上の成人8万4,496人を対象とした大規模ランダム化比較試験でプラセボに対する有意な市中肺炎予防効果が認められている(N Engl J Med 2015; 372: 1114-1125)。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会の「肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る)に対するワクチンに関する報告書」では、海外での実績などから、PCV13の肺炎予防における免疫不全者などの高リスク者に対する検討を継続していく必要性が指摘されている。

 最後に長谷川氏は「今冬はインフルエンザの流行、それに続く二次性肺炎の流行が懸念されていることから、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン両方の接種が重要である。65歳以上の高齢者、特に基礎疾患がある場合は肺炎球菌性肺炎の罹患リスクや重症化リスクが高まる。医師と患者が歩み寄りコミュニケーションギャップを埋めることでワクチン接種率を高め、積極的な予防に努めてほしい」とまとめた。

(大江 円)