米・Harvard Medical School/Harvard Pilgrim Health Care InstituteのNoelle M. Cocoros氏らは、デンマークの全国患者登録データを用いてインフルエンザとパーキンソン病(PD)の関連を検討。その結果、インフルエンザ感染者では非感染者と比べて感染後10年超における長期的なPD発症リスクが70%以上高かったとJAMA Neurol2021年10月25日オンライン版)に発表した。一方、インフルエンザ以外の複数の感染症とPDとの関連も調べたところ、感染後10年超におけるPD発症との強い関連は見られなかった。

感染後15年超では9割増

 これまで、インフルエンザ感染とPD発症リスクの関連については多数の議論があったが、結論は出ていない。

 Cocoros氏らは、PDでは運動障害が発現するまでの期間が長いことから、インフルエンザは感染後10年超におけるPD発症リスク上昇に関連するとの仮説を立て、検証した。

 まず、デンマークの全国患者登録データから、1977~16年にインフルエンザと診断された患者を特定。複数回感染した患者は初回感染のみを対象とした。次に、2000年1月1日~2016年12月31日にPDと診断された患者1万271例(平均年齢71.4歳、男性61.3%)を抽出し、さらに対照として1:5で年齢と性をマッチングした非PD患者5万1,355例を選出した。35歳未満の若年性PD患者、薬剤性パーキンソニズムと診断された患者は除外した。

 これらの計6万1,626例を、PDおよびインフルエンザ感染との関連が指摘されている因子〔心血管疾患、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、肺がん〕を調整した条件付きロジスティック回帰モデルによる解析に組み入れた。

 解析の結果、インフルエンザ非感染者と比べ、感染者では10年超の経過後にPD発症リスクが1.73倍に上昇していた〔調整後オッズ比(aOR)1.73、95%CI 1.11~2.71、P=0.02〕。感染後15年超でのPD発症リスクは非感染者と比べて1.91倍(同1.91、1.14~3.19、P=0.01)だった。

 さらに、インフルエンザ診断の特異度を高めるため、インフルエンザ流行のピーク期間における感染者に限定した解析を行った。その結果、感染者の減少により95%CIが拡大し統計学的に有意ではないものの、感染後10年超でのPD発症リスク上昇が認められた(aOR 1.52、95%CI 0.80~2.89、P=0.21)。

尿路感染症のみわずかにリスク上昇

 インフルエンザ以外の特定の感染症(肺炎、消化管感染症、その他の細菌感染症、敗血症、男性の性器感染症)では、感染後5年以内の早期には非感染者と比べてPD発症リスクが上昇したが、10年以上経過後はPD発症との関連が認められなくなった。

 インフルエンザ以外に感染後10年超におけるPD発症リスクが上昇したのは尿路感染症のみで、上昇幅はわずかだった(OR 1.19、95%CI 1.01~1.40)。

 以上を踏まえ、Cocoros氏らは「インフルエンザは感染後10年超における長期的なPD発症リスク上昇に関連していた」と結論。ただし、研究の限界として「観察研究であるため因果関係は証明できない。また、PDの家族歴は今回の解析対象外だが、遺伝的背景の違いがPD発症リスクに影響した可能性がある」としている。

 その上で、「前駆期PD患者の一部は、自律神経障害など運動障害以外の症状が既に発現し、運動障害を発現する数年前から感染リスクが上昇していた可能性がある」と指摘。また「尿路感染症はPD発症の原因ではなく、PDの超早期症状である可能性がある。尿路感染症および神経因性膀胱はPD患者に特に多く見られる合併症であり、PD前駆期には尿路感染症の原因となりうる自律神経障害がよく見られる」との見解を示している。

(太田敦子)